小倉まちじゅうモール

小倉まちなかコラム

生活に寄り添う上質でお手頃なタオルにこだわるプロフェッショナル【カンバヤシタオル】

「タオル」は、毎日の暮らしのあらゆるシーンで欠かせない生活必需品。直接肌に触れるものだからこそこだわりが強い方がいる一方、頂きもののタオルを長く使い回しているという人もいるのではないでしょうか。

ちゅうぎん通りから少し入ったビルの2階にある「カンバヤシタオル」は、大正時代から続くタオルの専門店。取り扱うのは日常づかいのタオルから贈答品まで。実際に使い心地を試し、自信を持って勧められる商品をできる限り安く提供しています。

知る人ぞ知る、良質なタオルに出会える穴場

「このタオルを使い始めたら、もうほかのタオルは使えない」
そんなタオルとの出会いを経験して幾度も足を運ぶ人がいる専門店。それがカンバヤシタオルです。

▲特殊な凸凹構造で濡れても体にくっつかず快適な〈Gyu.to〉は、サウナやアウトドアに最適
▲特殊な凸凹構造で濡れても体にくっつかず快適な〈Gyu.to〉は、サウナやアウトドアに最適


店主の上林洋子さん、息子の幸生さんが営むカンバヤシタオルは、近江商人だった洋子さんの伯祖父が大正の終わり頃に小倉に根を下ろし、衣料品や雑貨の店を開いたのが始まり。戦時中は一時滋賀に戻り、戦後は大阪のタオル問屋を経て小倉に戻りました。昭和42年に洋子さんの父・正治さんがタオルの卸売り会社、上林タオル株式会社を設立しました。

▲店内には昔の看板も残されている
▲店内には昔の看板も残されている

「父の時代はビルの3階まで商品がびっしりでしたね。当時は卸し専門だったから、近所の人にも何の店かわからなかったようです。そんな父が平成20年に急逝し、私が後を継ぐことになりました。その時に1階に店舗をつくり、卸しと並行して一般のお客様向けに小売りも始めました」

突然の代替わりで戸惑うことの連続だったという洋子さん。先代の頃から務める従業員や取引先の助けを借りながら商品の買い方から値段の付け方、販売の方法までを一から学びました。新たに始めた店頭販売では、一般客向けに商品を売る喜びも知りました。

現在は息子の幸生さんと共にビルの2階に移した店舗でタオルの小売り販売と、理美容室や整骨院、飲食店などへの卸売りを行っています。

飾らない雰囲気の店内には、タオル専門店を長年営んできた経験と豊富な知識をもとに選び抜かれた商品が並びます。一つひとつ丁寧に書かれた説明書きからは、その商品のよさや特徴をしっかりと伝えたいという誠実なふたりの気持ちが伝わってきます。

▲取り扱う国内産のタオルのほとんどが泉州か今治産。品質の高いものであれば海外産のタオルも扱う
▲取り扱う国内産のタオルのほとんどが泉州か今治産。品質の高いものであれば海外産のタオルも扱う

「ブランドにこだわらず、質の高いタオルをできるだけお安く提供することを心がけてきました。それぞれのタオルのよさをお伝えしながらお客様の要望を聞き、その声をもとに『こんなものはないか』と問屋さんに問い合わせて取り寄せることもあります。こんな小さな店の声でも問屋さんが動いてくれるのは、長いお付き合いのおかげです」と洋子さん。

「最近人気があるのはバスタオルの半分以下のサイズの超吸水タオル〈バスタオル卒業宣言〉。今でこそ百貨店や通信販売などでも販売される人気商品ですが、うちでは早くから販売していましたし、お安く提供できるのが強みですね。日本アトピー協会推薦品でもあるので、肌触りのやさしさも人気の秘密です」

▲吸水性抜群でカラーバリエーションも豊富な〈バスタオル卒業宣言〉
▲吸水性抜群でカラーバリエーションも豊富な〈バスタオル卒業宣言〉

また、同じく日本アトピー協会推薦の〈おぼろレディースタオル〉も根強いファンがいる商品。通常の糸の半分の細糸を使ってつくられたこのタオルは、滑らかな肌触りが特徴です。

「一見、なんてことない普通のタオルのようですが、このタオルを一度使うと他のタオルを硬く感じてしまうほど柔らかいんです。アトピー肌や敏感肌の方が繰り返し購入してくださいます」

▲明治時代から変わらぬ製法でつくられているという〈おぼろレディースタオル〉
▲明治時代から変わらぬ製法でつくられているという〈おぼろレディースタオル〉

また、カンバヤシタオルでは企業名などを印刷した〈名入れのタオル〉も扱っています。名入れタオルは200〜300円程度のタオルでつくられますが、卸売りを長くやってきたからこそ、低価格とはいえ、より質の高いタオルで提供できるといいます。古くから百貨店の注文を受けているのも、そうした実績があってこそ。

店の一角では名入れタオルの検品ではじかれた〈訳ありタオル〉も販売。B級品とはいえ、品質は確かな国産タオル。普段使いやお掃除用として隠れた人気商品となっています。

▲〈訳ありタオル〉は常時あるわけではないので出会えたらラッキー
▲〈訳ありタオル〉は常時あるわけではないので出会えたらラッキー

「いいものをお安く」さらに、よりよい使い方も伝授

上林さんは「いいタオルとは、まず何よりも肌触り。ついで吸水性と耐久性。そして手が届きやすい価格で使いやすいもの」であることだといいます。

カンバヤシタオルで扱っている商品のほとんどは国産ですが「日本と同じ規格で作られた質の良いものであれば国産にはこだわらない」と話します。むしろその方が質の高い商品をお安く提供できるからです。

「新しく扱う商品は、まず自分たちで実際に使って試します。私たちがいいと思ったものでも、例えば髪の長い人とそうでない人とでは好みが違うこともある。心から推せるものを提供するには、自分たちで使ってみることがなにより大事だと思います」と洋子さん。

▲髪を想ってつくられたヘアタオル、ヘアターバン、ヘアミトンのセット〈髪想い〉
▲髪を想ってつくられたヘアタオル、ヘアターバン、ヘアミトンのセット〈髪想い〉

「さらに言うと、使い方、洗い方でタオルの持ちも違うんです。小売りを始めてお客様と話してみると、タオル屋が想定しているのとお客様の使い方、洗い方の実情はかなり違うということがわかりました。タオルそれぞれの特性を踏まえて、風合いを長く持たせる洗い方などを説明ができることが実店舗の価値だと思っています。タオル屋としてはいいタオルをいい状態で長く使って欲しい。使い方までお話しすることで、『この商品を買って本当によかったから、また買いに来たわ』と言っていただける。そのお客様の声が何よりの原動力になっています」

幸生さんも、「お客様に直接タオルの魅力をお伝えしたい」と静かに、でも熱くに語ります。

「せっかく買っていただいたタオルでも、それぞれの特徴や機能性を活かす使い方を知らないままだとそのよさを感じられず満足につながらないと思うんです。だからこそうちでは、そのタオルの良さを100%活かせる使い方まで説明するようにしています。たとえ安いタオルでも、使っていただければスーパーやコンビニの商品とは違う品質だとわかっていただけると自負していますし、最適な使い方を知ることで毎日快適に生活をしていただけると思っています。

▲色柄豊富な〈たおるお手ぬぐい〉は、長めの丈で役立つシーンも多そう
▲色柄豊富な〈たおるお手ぬぐい〉は、長めの丈で役立つシーンも多そう

タオルにはお顔拭き、お手拭き、バスタオルなど役割がたくさんあって、種類があればあるほど、それに特化したタオルもあります。生活必需品であるタオルによって、お客様のお役に立てて、生活が少しでも豊かになれば何よりも嬉しいですし、そのために僕らにできることは探し続けたいと思っています」

タオル専門店として、それぞれに追いかける夢

二人三脚でカンバヤシタオルを盛り立てるふたりには、それぞれに夢があるといいます。
7年前から店に携わるようになった幸生さんは、目標とする商売のあり方を模索し、専門店としての姿勢を近隣の商店主たちから学んでいると話します。

「2〜3年前から商店街や日専連など外部の方と関わらせていただき、商売についていろんなアドバイスをいただけるようになりました。先輩たちの背中を見ながらたくさんのことを学び、試行錯誤をする僕を見て、あるとき商店街の方から『商人とは君のような人をいうんだよ』と褒めていただいたことは何より嬉しかったし、自信になりました。

まずは、いいタオルの敷居が下がればお客様の生活がより豊かになると思うので、1,000円前後ぐらいの価格で、よりよい商品をお客様に届けられたらなと思っています。
毎年、店のイチオシ商品を紹介する取り組みに参加しているのですが、近隣の商店街の人にもその商品を使ってもらってアンケートを取り、意見を聞くことも始めました。より多くの意見をいただくことで、自分たちだけでは気づけなかったことも見えてきて、自信を持ってお勧めできるタオル選びにつながっています」

最近ではアイドルグループのコンサートに合わせて、メンバーカラーのタオルを並べるなどの挑戦も。幸生さんのこの行動力に、洋子さんは「私だったら考えつかなかった」と、喜びを隠しません。

一方、洋子さんは子どもの頃に愛用していたタオル地のパジャマを再び販売することを長年の夢としています。

「タオル地のパジャマは一度着るとやめられないくらい気持ちがいいんです。昔は大阪のタオル屋さんがつくっていたんですが、今はお値段が合わなくなってきたんでしょうね、廃盤になってしまって。寝具メーカーで出しているところもあるけど10,000円以上もする。もっとリーズナブルな価格で“タオル屋さんのパジャマ”として出したら売れると思うんだけど、この夢はまだ叶いませんね。もう自分で作るしかないよと言われています。でも問屋さんに意見を言い続けることで叶うこともあるので、何年かかるかわからないけど、まだ諦めていません。手の届く価格であのよさをみんなに届けたいですね」

▲4重ガーゼの枕カバー〈まくらマキコ〉は肌触りサラサラで朝までズレない優れもの
▲4重ガーゼの枕カバー〈まくらマキコ〉は肌触りサラサラで朝までズレない優れもの

今はなんでもネットで買える時代。地方のタオル問屋自体が珍しくなってきたといいます。
とはいえ、カンバヤシタオルのように直接商品に触れることができ、商品の特徴やよさを知ることができるのは、消費者にとってはメリットしかありません。

「お客様のお悩みやこだわりを聞き『だったらこの商品がいいですよ』とお伝えできるのは店舗だからできること。ネット販売やスーパーなどの量販店では得られないものを提供できる店でありたいと思っています」と話す幸生さんはこう続けます。

「タオルは日常生活に密着しているからこそ、お客様にとっては『こういうものがあったら』というこだわりがあるはずなんです。かといって1,000円以上の高いタオルを日常使いにするにはハードルが高い。本来は中間価格帯の500円前後のタオルがいちばん生活に寄り添うタオルだと思うのですが、そういうタオルを作る工場がコロナ禍で相次いで廃業してしまいました。手に取りやすく、質のいい、快適なタオルを提供したい私たちは、これからも挫けずに生活に寄り添うタオルを探し続けないといけないと思います」

カンバヤシタオル
北九州市小倉北区京町1-4-8 上林ビル2F
TEL:093-541-6692
営業時間:10:30〜18:00
定休日:水、日曜祝日
SNS:FacebookInstagramX


取材・文/写真:岩井紀子

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