小倉まちじゅうモール

小倉まちなかコラム

天然石と占いで人を癒し、道を照らす。“パワーストーン”ブームの火付け役 【トライアングル】

小倉魚町二番街、通称「小倉城通り」。平和通りから小倉城に向かって伸びるアーケード商店街です。通りには小倉城までの距離が記され、みかげ通り方向に歩いたその先には小倉城の姿が見えてきます。

アーケードの西端の角にあるのが今回訪れたパワーストーン専門店トライアングルです。

天然石やアクセサリーなどヒーリンググッズの宝庫

▲店の入り口には国内最大級とも言われる巨大なクリスタルが飾られている
▲店の入り口には国内最大級とも言われる巨大なクリスタルが飾られている

窓から光が差し込む明るい店内には、天然の鉱石からアクセサリーとして身につけられるパワーストーン、精油、ヒーリンググッズなどが所狭しと並んでいます。天然石のブレスレットやインテリア用にデザインされた石、パワーストーンで作られたカッサなど、その商品は多岐に渡り、次々に訪れるお客が思い思いに商品に手を伸ばしています。

現社長の中村 桂子さんが2年前にこの店を引き継いでからは、ディスプレイや商品構成にも工夫を凝らしているといいます。

「店の四隅でフランキンセンスのオイルを焚いています。フランキンセンスは浄化作用が高いオイルとして知られていて、エジプトでは朝、太陽の神を拝む時に焚くものです。お客様が店に1歩入った瞬間から、浄化されたいい空間に包まれてほしいと願っています。そのほかにも女性目線で美容グッズなども増やし、天然の石たちの魅力が伝わるように照明にもこだわっています」

直感力に優れた人からは「この店の石たちは元気がよくて、アピールがすごい」と言われたこともあるのだそう。

多くのお客は女性ですが、最近は男性客も増えているのだそう。また、会社の経営者が石を求めて訪れることも多いといいます。

石の魅力は神秘のエネルギーを与えてくれること

パワーストーンの存在は知っていても、実際に買ったことがない、興味を持ったことがない、という人も多くいると思います。

なぜ石を持つことがいいのでしょう。素人の素朴な疑問に、中村さんはこう答えてくれました。

「自然界ではすべてのものがエネルギーを持っています。その中で、私たちより何万年も前に生まれて成長している石は、そうしたエネルギーを持つ“マスター”的な存在と言えます。

石の種類によって、それぞれにパワーを持っていて、例えば開運の力を持つ石、元気をくれる石、コミュニケーション能力を高めてくれる石、体調を整えてくれる石など、そのパワーはさまざまです。パワーストーンを持つということは、なんとなく調子がよくない時でも石の持つパワーを借りて意識や考え方を軌道修正して整えていく、ということなんです。

不思議なんですけど、うちで見つけたエメラルドグリーンの石を瞬間的に選んだお客様が、ひどい不眠症が解消されたというケースもあります。そういうきっかけになるとうれしいですね。

とはいえ、スピリチュアルなことやパワーストーンや占いに共感できない人もいるので、前面にそれを押し出すことはしていません。あくまでお客様が求めていることに寄り添っていくことを大事にしています」

では、数ある商品の中から今の自分に合う石をどう選んだらいいのかも伺ってみました。

「初めてうちの店を訪れて、石のことを何も知らなくても大丈夫です。店内には生年月日から幸運を呼ぶパワーストーンをはじきだす無料のコンピューターを設置しています。そこではインド占星術によって選ぶパワーストーン、星座別のパワーストーンがわかります。第一段階はそういうところから、スタートされたらいいと思いますよ」

アクセサリーや小さな鉱石などは初心者でも手に取りやすいパワーストーンのひとつ。コンピューターで出たデータを手掛かりに、スタッフに相談してみるのもよさそうです。

上級者になると、住んでいるお部屋から整えたい、いいことが起きるように住んでいる土地を浄化したいなど、目的を持って商品を求めて来るといいます。

「上級者向けの商品として最近人気が高いのは、ゼロフィールド水晶ですね。水晶は螺旋状に結晶を作っていくんですけど、構造上右回りと左回りの2種類の水晶があるんです。それぞれの水晶を組み合わせることでエネルギーがぶつかり合いゼロ磁場空間ができる。つまり結界が張れるんです。それをお住まいの土地やお部屋の四隅に置く商品がとても人気です。そのほかにも2種類の水晶を組み合わせたブレスレッドなんかもあり、おすすめです」

▲地鎮用に買い求める人が多いゼロフィールド水晶
▲地鎮用に買い求める人が多いゼロフィールド水晶

“パワーストーン”という呼び名はこの店から生まれた

▲パワーストーンのブレスレットも人気商品のひとつ

魚町のSABOビルで1981(昭和56)年に創業したトライアングルは、先代の社長が占いの部屋としてオープンしたのがはじまり。そのうちに世界中のタロットカードなどの占いグッズを扱うようになります。

「占いって言葉で伝えていくものなので、形がない世界なんですね。それをなんとか形としてみなさんに伝えられるものがないかと、先代は世界中を旅していました。そんな中、旅先のアメリカでみんなが石を身につけているのを見て『これだ!』とひらめいたらしいんです。

だけど、ただ『石』といって販売してもおもしろくないので、“パワーストーン”という名前をつけて販売を始めたんです。それが1983年くらいでしょうか。だからパワーストーンという言葉は小倉発なんですよ」

トライアングルはその当時、東京・渋谷にも支店があり、その店の1階には当時大流行したアパレルブランド「セーラーズ」があったそう。人気店のそばという立地の影響もあってか、パワーストーンが雑誌などでも度々特集されるようになり、パワーストーンの存在はあっという間に世の中に広まっていったといいます。

まだスピリチュアルという言葉もなかった時代に、今では一般的にも認知されているパワーストーンという名前が小倉で生まれたことは驚きです。

▲さまざまな占いグッズも取り扱っている
▲さまざまな占いグッズも取り扱っている

「先代の社長は当時有名だった日本の占い界の大御所とも通じているような人で、人がやっていないことを率先してやっていくタイプの人。その後もアンナ・リヴァさんというアメリカの魔女に会いに行って、彼女が調合した『マジカルオイル』の輸入も始めました。魔術の儀式や浄化に使われるたこのオイルは今でも取り扱っています」

また、店の一角にある占いコーナーには、タロット、西洋占星術、九星気学、霊感霊視など、日によっていろんな鑑定士が在中しています。予約も可能で、空いていればすぐに鑑定してもうこともできます。

高校時代に占い師として見出され、この道に

現在はトライアングルの社長として経営に携わる中村さんは、占い師でもあります。子どもの頃から直感力に優れており、中学時代に遠方に住む叔父の死を予感する不思議な体験を経験したことをきっかけに、占いの世界に導かれていきました。

「14歳で初めてタロットカードを手にした時、不思議なんですけど『すでに知っているからあとは思い出すだけ』という言葉が自分の口から勝手に出てきたんです。それで独学でタロットを学び、お友だちを占ったりしていました。その評判が広まって経営者の方が相談にこられたりするようになって、鑑定料の代わりに置いていってくださる図書券でまた占いの本を買って勉強する、という日々でした。

そして高校生の夏休みにたまたま行ったのがSABOビルの占いの店でした。男性の占い師さんに占ってもらった後、『じつは私も占いをやるんです』と話したら、『じゃあ僕を占ってみて』と言われてその人を占い、その場で『アルバイトに来ないか』とスカウトされました。その時の占い師さんが先代の社長だったんです。

それからは、授業が終わった土曜の午後と日曜日に、店で占い師として働く日々が始まりました。そのうちに占いのイベントなどにも行くようになって、そういう生活が短大まで続きました」

高校時代から占い師として活躍してきた中村さんが、占いにおいて大切にしていることは、怖いことを言って相手を不安にさせるのではなく、よりよい方向へ進めるよう意識の置きどころを伝えることだといいます。考え方や物ごとの捉え方にひとつで、体や意識が変わっていくという中村さんの考えは、20代の頃に自身が患ったパニック障害を乗り越えた経験が大きく影響しています。

脳科学を学び、よりよい意識の置きどころへと導く

「当時の私は電車やバスに乗ると動悸がして過呼吸を起こしてしまい、何度も救急車を呼んだくらいひどい症状でした。これって不登校で朝になるとお腹が痛くなるのと同じ。人の体は、脳から指令が出て動いているはずなので、自分の思いとは裏腹に症状が出るのは、脳のエラーだと思ったんですね。どこかでミステイクが起きている。この仕組みを知りたいと思って、脳科学を勉強するようになりました」

脳科学を学んで分かったことを尋ねると「結局は思い込みです」ときっぱり。

「自分の脳というコンピューターに何を打ち込んでいるかが大事なんです。コンピューターは打ち込んだものを検索しますが、ただ、それについての答えしか出てこないですよね。人間も同じで、できてしまった思考のパターンを変えていかないと生活も変わりません。

でもそこに自分で気づくことはむずかしいんです。だから石や占いを通じて本来意識を向けるべき場所に気づいて、変えてあげることが大切なんです」

「悩んでいることばかり考えてしまう思考の矛先を変えると、願いを考えるようになり、それは未来をイメージすることにつながる」と話す中村さん。そうすると脳が勝手にその答えを探すようになり、ポジティブな方向へと向かい始めるのだそう。

「考え方はすごくシンプルなんです。そのことを知っていただいたら、すごく幸せになれると思います」

トライアングルは、パワーストーンやヒーリンググッズという形あるもの、そして占いによる言葉を通じて「どこに意識をフォーカスするかで迎える明日は違ってくる」ということを発信している場所だと話す中村さん。公式LINEでは毎日のこよみなどの情報を発信し、その手助けをしています。

「単純に『この石がいいですよ』だけではなかなか伝わらない。なぜいいのかを形ある状態で伝えていきたいというのが、先代からの思いだと思っています」

パワーストーンや占いをよりどころにして、癒しを提供することは「私の生きる道そのもの」とも語る中村さん。

「馴染みのない人にとっては近づき難い店かもしれないですが、自然のものを取り扱っているので、気負うことなく野原に行くような感覚で、自然体で立ち寄っていただけたらうれしいですね。キラキラしている石を見てうれしい気持ちになったり、理屈じゃなく感じるものを大事に向き合ってみてほしいです」

「自分がいい方に変わっていけるかどうかは、何を意識しているかがいちばん大事」
トライアングル 中村 桂子

トライアングル
北九州市小倉北区魚町2-2-22 トライアングルビル1F
TEL:093-551-7631
営業時間:9:00〜18:00
定休日:なし(年末年始のみ)
SNS:InstagramLINETikTok


取材・文/写真:岩井紀子

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