小倉まちじゅうモール

小倉まちなかコラム

日本料理人の感性が生きた“和韓融合”の韓国惣菜の奥深い味わい【+Chan】

旦過市場の北側入り口に2024年7月に新たにオープンした+Chan(プラスチャン)は、キムチをはじめとした韓国食品の専門店。南側入り口にあるChanの姉妹店として、旦過市場を北から南から盛り上げていきたいと、明るい呼び込みの声が響く元気なお店です。

和食料理人ならではの目線で「和」と「韓」のいいところを掛け合わせ

▲いかにも旨そうな照りと香りの青唐辛子味噌。今すぐ白いごはんにのっけて食べたい!

ショーケースに並ぶ種類豊富なキムチや韓国風にアレンジされた食材たち。100種類を超えるという商品はすべて、ご主人の平松和久さんの手づくりです。「引き出しは無限にあります!」と奥様の愛さんが話す通り、新しい商品も次々に開発されているそうで、売れ筋の「スルメキムチ」や「クリームチーズキムチ」など、定番から斬新な商品までがひしめき合っています。

和久さんは地元北九州のホテルや料亭などで30年もの間腕を磨いてきた和食の料理人。和食の世界にいた和久さんが韓国料理に目覚めたのは、キムチ店を営む友人の父に持ちかけられた「日本人に合うキムチができないだろうか」という相談がきっかけでした。

▲これはどんな味だろう?と食べてみたくなる商品がずらり。小分けにされていてチャレンジしやすいのもいい

「キムチ工場に足繁く通い研究を重ねるうちに、韓国独特の調味料や食文化って面白いなと思って。それで、和食料理店をやりながら移動販売でチーズハットグを販売したりしているうちに、だんだんと韓国料理にハマっていきました」

和食も好きだったけれど、決まり事が多い和食よりも韓国料理の大胆さが性に合っていたと話す和久さん。「おいしいものをたくさん食べてもらいたい」という料理人としての本能に、より近い感覚を感じたともいいます。

「たとえば煮物で言うと、和食だと出汁で炊いて冷まして含ませて味を決めていくんだけれど、そこに韓国ダレを混ぜ込んで元の味をぶっ壊して、新しいおいしさを創造していくみたいなことができるんですよね。それまで学んできた和食の概念がひっくり返ると言うか。和食にはない考え方。それがもう楽しくてね」

▲ピリリと効いた辛味と旨みがやみつきになる「スルメキムチ」と「かえりいりこ」は人気商品のひとつ

和久さんの作るキムチや惣菜のベースには長年培ってきた和の味があります。下地に和の味をしっかりと入れた上で、ヤンニョムなどの調味料で新たに加えられる味の進化。+Chanの商品はまさに“和韓融合”でつくられた味です。

さらに添加物は一切使わず、キムチなどには梨の酵素を使うなど、健康食品として安心して食べてもらうための工夫も凝らしています。

「キムチは発汗作用もあるし、血圧が安定したり免疫力を高めたりする効果もあると言われています。美容に敏感な女性には特におすすめの食品です。うちの商品で腸から健康になってほしいです」

日本人に馴染む味にするために「毎日が研究です。失敗も多いですけど」と笑う和久さんは、なんだかとても楽しそうに見えました。

旦過市場をもっと明るい場所にしたい

「地元の人はもちろん、観光客にも楽しんでもらえる明るいお店を目指しています」と話すおふたり。店頭にはイートスペースも用意され、韓国の代表的なおやつとして親しまれる揚げドーナツ「クァベキ」や人気の「ヤンニョムチキン」、揚げ餃子「マンドゥ」など、日替わりの揚げ物をその場で楽しむ家族連れの姿もありました。

「小学生が自転車に乗って『チーズハットグください』って来たりしますよ。そういうのは嬉しいですよね。ついついおまけを付けてあげたりしちゃいます」 令和元年に旦過市場南側入り口にChanをオープンさせた時も、市場の雰囲気を明るくしたいという気持ちがあったという平松夫妻。今回北側入り口に新店舗をオープンさせたのも、火災から復興した旦過市場のイメージをより明るくして盛り上げたい、という思いから。

▲日替わりの揚げものと一緒にビールや韓国のお酒も楽しめる

「新しいお店は商店街から旦過市場への入り口なので、人の流れが早いですね」と話す愛さんは、店頭での接客を担当しています。

「店を始めた最初の頃はお客さんの心を掴むのがむずかしくて、どう声かけしていいか難しかったですね。だんだんとお客さんと話すきっかけを掴めるようになって、お客さんの好みを聞いたりしているうちに、リピーターも増えてきました。声をかけるとかけないとではお客さんの反応も全然違うんです。黙っていたらおいしいものも伝えられないので、私は店頭でしっかり声を出していかないといけないと思っています」

▲元気な声でお客に声をかける愛さんはこの店のムードメーカー

お客から「おいしかった」といった反応をもらったら、必ずその言葉を和久さんに伝えるといいます。「作り手としたらその言葉ひとつでモチベーションが上がるし、体力も一気に回復しますね」と和久さん。夫婦だからこその絶妙なコンビネーションがこの店を支えています。

鶴橋や錦市場に負けないにぎわいをつくりたい

「Chan」という店名の由来は「1日でいちばん使う言葉だと思ってつけた」と話す和久さん。子どもを呼んだり、誰かの名前を〇〇ちゃんと呼んだり。大学生から小学生まで、5人の子どもを育てる平松夫妻らしい、愛を感じるネーミングです。

▲ブラジリアン柔術を教えていたこともあるという和久さん。今は柔道に励む我が子の応援に忙しいのだそう

「1店目がChan、2店目のこの店は+Chan。いずれは旅行客向けのお土産を扱う=Chanを出したいと思っているんですよ」と将来のビジョンを話してくれました。そのために、今が頑張りどきと話す和久さんは、「起きている間はずっと料理のことを考えている」といいます。

「お客さんはみんな新しい物が好きだから、飽きさせないように。毎回違う商品に出会えるようにしたいと思っています。日本各地の市場を見て回りますが、大阪の鶴橋とか京都の錦市場とか、歩けないくらい賑わっているんですよね。それと比べると旦過はまだまだおとなしい。よその市場に負けていられないなと思っています」

旦過市場の入り口にある+Chanにお客が群がるような景色を作りたいーー。
平松夫妻はこの店を、にぎやかで活気ある市場の雰囲気づくりを担うポイントゲッターだと考えているそう。自身の店から活気を生み、旦過市場、そして北九州市自体を盛り上げたいと話します。

午前中は高齢の常連が、日中は観光客や外国人も多く訪れる+Chan。夕方になるとお父さん世代のお客が酒のつまみとして大量に買い込んでいくことも多いといいます。中には「ここの商品がおいしいから、もう韓国まで行かなくていいね」という嬉しい声も。
和韓融合のオリジナルの味が、幅広い層に支持され、愛されている証拠です。

「買い物客や観光客が群がるような、人が溢れかえる旦過市場の雰囲気をうちの店から作りたい」
+Chan 平松 和久/愛

+Chan
北九州市小倉北区魚町4-2-1
TEL:093-511-1137(Chan)
営業時間:10:30〜17:30
定休日:日曜

取材・文/写真:岩井紀子

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