小倉まちじゅうモール

小倉まちなかコラム

創業90周年は次の10年へのスタート。地域との“つながり”を大切に【井筒屋】

1935(昭和10)年7月に設立登記した井筒屋は今年、創業90周年を迎えました。これまでの歩んできた歴史を噛み締めつつ、90年という節目の年を「100年に向けたスタートの年」と位置付け、〈つながるご縁、つむぐ未来。〉をテーマに、今後も地域の人の人生に寄り添い、感謝の気持ちを込めて歩んでいきたいとしています。90周年イヤーとなるこの1年間には、さまざまな企画が目白押し。地域に根ざした百貨店ならではの楽しみを提供してくれます。

人と人、人と地域を結ぶ、地元に愛される百貨店として

▲井筒屋の井桁マークを起草させる「菜の花結び」をあしらった周年ロゴマーク
▲井筒屋の井桁マークを起草させる「菜の花結び」をあしらった周年ロゴマーク

井筒屋90周年の象徴となる〈つながるご縁、つむぐ未来。〉というテーマとロゴマークは、社内公募によって選ばれたもの。あえて社内から募った理由について、髙橋 昭一店長は次のように語ります。

「従来の周年と違って、今回は社内に『自分たちの手で、手作り感のある年にしよう』という雰囲気が溢れていました。従業員から寄せられたさまざまな案からは、地元の皆さま方を大切に思う気持ち、お客様とのつながりへの感謝の気持ちが強く伝わってきました。小倉という地で長年愛され、つながりを築けたことをこれからの未来に結びつけていきたいという思いから、90周年を祝う年ではあるけれども、むしろ次の100周年に向けたスタートの年という気持ちで取り組んでいくことにしました」

その思いは井筒屋の人気企画でもある催事においても生かされていきます。

「お客様に1番喜ばれている8階での物産催事は百貨店にしかできない催しのひとつです。5月には初めて石川・福井・富山の3県に特化した『北陸物産展』を初めて企画しています。また、夏に予定している『九州のうまいもの展』では、地元に住む方々だけでなく、北九州に帰省した人にも喜ばれるように、九州全県の美味しいものを体験し、喜んでいただける催事にしたいと思っています。また秋には“あんこ”に特化したスイーツの企画も上がっています。そのほかにも昨年好評だった『文具の博覧会』も4月にスケールアップさせて開催する予定です」

「背伸びをせず、自分たちのできる範囲内で手作り感のあることを一生懸命やろう」という思いの中、それぞれの催事に90周年ならではの目玉商品を加える予定だといいます。1年を通して開催されるさまざまな催事に期待が膨らみます。

また、それぞれの売り場では〈リミテッド90〉と題して、井筒屋でしか手に入らない限定商品や井筒屋での先行販売など、限定品の販売にも力を入れていくそう。今までにないこだわりの商品が毎月各部門ごとに登場予定なので、こちらも目が離せません。

魅力ある取り組みで井筒屋ファンを増やしていきたい

近年の取り組みとして、デジタル化の強化/サービス力の強化/商品力・イベント力の強化の3つに力を入れてきたと話す髙橋店長。

まずデジタル化においては、2024年4月から「井筒屋アプリ」をスタート。井筒屋の最新情報をタイムリーに届け、クーポンなどの特典もある井筒屋アプリは好評で、2025年1月末時点でのアプリ登録者数は8万2,000人となりました。
また、サービス力の強化としては、井筒屋アプリを既存のハウスカード「ウィズカード」とアプリを連携することで、アプリ内でお買い物ポイントが貯まっていくシステムを採用。これまでは1,000ポイントからしか利用できなかったポイントを、1ポイントから利用できるようになり、一層便利になりました。

中でも力を入れてきたのが、商品力・イベント力の強化です。北九州ではなかなかできない買い物体験を味わってもらうことを念頭に、本館地下食品売り場の一角にポップアップショップ「メッセージラボ」を設置。また、昨年はデンマーク発の雑貨ブランド〈フライングタイガー コペンハーゲン〉のポップアップが開催されました。

「食品売り場の『メッセージラボ』に昨年出店していただいた近江八幡の和菓子店〈たねや〉さんは、九州での出店がないお店ですので、北九州ではなかなか味わえないお菓子が楽しめると好評をいただきました。また、北九州では買えなかった京都の老舗の煎餅・おかきのお店〈小倉(おぐら)山荘〉さんにも出店していただきました。北九州にないお店での稀有なお買い物を楽しんでいただきたいという思いでつくった『メッセージラボ』ですが、今後は地元で頑張っているお店も定期的に紹介していく場になればと思っています」

全国の有名店の商品を積極的に揃う一方、井筒屋では地方の百貨店として地域やエリアも根ざした商品を提供していくことにも注力しています。
中でも2019年3月から本館6Fで始めたコーナー「きたきゅうコロンブス」は、地元でがんばる店舗や作家さんなど、地域と連携した商品を展開する象徴的なコーナーです。

「きたきゅうコロンブスでは、スペースの1/3程度は毎週商品が入れ替わるようにして、いつ来ても新しい商品に出会えるような工夫をしています。また、半年に1度、コーナーの集大成として出展していただいた店舗や商品が一堂に会する『北九州フェスティバル』のようなイベントとして、皆さんにお披露目しています。昨秋に行った京築地区の特産品を集めた催事も大盛況に終わりました。今後はこうした地域との連携を深めるコーナーを広げていきたいとも考えています。お客様に喜んでいただき、出店者の方々にとってもファンづくりの場となる機会を作ることは、井筒屋のファンを増やすことにもつながると考えているので、積極的に取り組んでいきたいですね」

▲昭和11年の開店当初(左)と、本店大増築をした昭和40年の井筒屋(右) 井筒屋HPより

2023年3月から小倉井筒屋の店長を務める髙橋店長。博多から小倉に赴任した際に「お客様が『井筒屋さん』と「さん」づけで呼んでくださることに重さとありがたさを感じました」と話します。

それに、と髙橋店長はこうも語ります。

「じつは私は博多井筒屋、コレット、黒崎井筒屋のすべての店の閉店に立ち会ってきたんです。どの店でも営業最後の日のシャッターを閉める時、お客様が大きな声で『ありがとう』と言ってくださいました。本当に涙が出ましたね。この言葉は絶対に忘れてはいけないと思っています。
井筒屋90周年にあたって、これからもお客様からのありがとうの言葉をいただけるように感謝の気持ちを忘れずに、一生懸命やっていかないといけないと思っています」

そのために、接客サービスの面では「考えよう。お客様のためにできること」というキャッチフレーズを全館で共有。

「接客を通じて一人ひとりのお客様に喜ばれるサービスをそれぞれの販売員が考えて行動することを積み重ねていけば、きっと素晴らしい百貨店になると思っています」

井筒屋に勤めて40年の髙橋店長は「井筒屋は人生そのもの」だと話します。その経験を活かしながら、百貨店として地域の人々の暮らしがより豊かになるような魅力的な商品を提供してお役に立ちたいという気持ちは忘れたくない。また同時に、若い層にも憧れの存在であることも大事だといいます。

「若い方にとっては、もしかすると百貨店は敷居が高い場所かもしれません。でも、たとえば大切な人へのギフトだったり、初任給でずっと憧れていたものを購入したりする時に、井筒屋を選んでいただけるような、そんな憧れの存在であることも大切だと思っています。

そのためにも、こだわりの商品、本当にいい品揃えをしていく我々の対応力もレベルアップしていきたいと思います。そしてより地域と地元の人々とのつながりを大切にした百貨店であることを目指しています」

90周年という節目の年に、その先の未来へ向けて地域とともに歩み続ける井筒屋の新たな一歩が、いま始まっています。

「百貨店は時代と共に変化し変わっていくもの」
井筒屋 本店長 髙橋 昭一

井筒屋
北九州市小倉北区船場町1-1
TEL:093-522-3111(代表)
営業時間:10:00〜19:00
定休日:元旦のみ
SNS: InstagramXFacebookLINEアプリ
90周年特設ページ


取材・文:岩井紀子

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