小倉まちじゅうモール

小倉まちなかコラム

空腹をガツん!と満たす充実の「B定食」は小倉のソウルフード【中華料理 娘娘】

小倉ちゅうぎん通り商店街沿いで1960(昭和35)年から営業する「中華料理 娘娘(にゃんにゃん)」は、そのおいしさとボリュームで小倉っ子の胃袋をガッツリ掴む老舗店。古くは工場勤務で腹を空かせた労働者に、現在は食べ盛りの学生からサラリーマン、最近では女性のおひとりさま客にも愛される、飾らない町中華です。

地元民はもとより小倉を離れた人や出張で訪れる人も、「小倉に来たからにはぜひ娘娘へ!」というほどの人気で、オープンと同時に行列ができる日もしばしば。小倉のソウルフードとしてなくてならない名店です。

▲中細ストレートのたまご麺のラーメンと豚肉が乗った肉やきめしの「ラーメンB定食」
▲中細ストレートのたまご麺のラーメンと豚肉が乗った肉やきめしの「ラーメンB定食」

取材で店を訪れている間、店に入るなり「B定食で!」と注文するお客がなんと多いこと! 娘娘のB定食とはラーメンと肉やきめしのセット。数あるメニューを抑えて、ダントツ人気のサービス定食です。

豚骨ラーメンは透明感のあるあっさりとした豚骨スープに黄色いたまご麺が特徴で、具はチャーシュー、もやし、ネギと至ってシンプル。まったく臭みがなく優しい味わいです。ボリューム満点の肉やきめしは、パラパラに仕上がったやきめしの上に甘く煮込んだ豚バラ肉がトッピングされています。軽めの焼飯と肉との相性が絶妙でクセになる味わい。肉やきめしはサイズが小・中・大が選べます。 いつもならカウンター越しに店主であり娘娘2代目の藤川 謙二さんが腕を振るう姿が見えるのですが、この夏に体調を崩し現在は店に立つのは仕込みの時だけ。完全復帰を目指してリハビリ中の店主を常連客たちも待ちわびています。

▲少しでも早く料理を提供するために、手際よく料理を作る玲子さん
▲少しでも早く料理を提供するために、手際よく料理を作る玲子さん

店主の代わりに店を切り盛りするのは妻の玲子さんと長女の絵梨さん。注文が入ると絶妙な連携プレーで料理を仕上げていきます。「店を手伝い始めた頃は腱鞘炎になったり鍋を振るうのも大変でしたけど、待ってくださるお客様に少しでも早く料理を出してあげたいですからね」と玲子さんも絵梨さんも手を休めることがありません。

▲ラーメンを茹でる姿も様になっている長女の絵梨さん
▲ラーメンを茹でる姿も様になっている長女の絵梨さん

店主不在の状態での営業でも「お客様に『娘娘が開いてないと困る』と言って足を運んでいただけることが本当にありがたい。優しくていいお客に恵まれている」と話す玲子さん。長女の絵梨さんも「がんこ親父系の父ですけど、すこし口が悪くても根は優しいことをお客さんもわかってくれていて、愛されているなと思いますね」と話します。

先代の味を引き継ぎ、よりおいしくなるようにと試行錯誤を重ね今の娘娘の味を作った謙二さんが、厨房に帰ってくる日が待たれます。

人気の秘密は丁寧な下ごしらえで生み出すおいしさ

時には行列ができカウンターの人が絶えず、さらにはテイクアウトのお客も多い娘娘が愛される理由。それは間違いなく、丁寧な仕込みに裏付けされたおいしさにあります。

娘娘の料理のおいしさを支えるために欠かせないのが、日々の丁寧な下ごしらえ。ラーメンのスープには豚のゲンコツや頭骨が大量に使われていますが、一度茹でて骨を一つひとつ丁寧に洗ってからスープ作りを始めます。アク抜きをした豚骨に鶏ガラや野菜などを加え、じっくりと煮込むこと数時間。臭みがなくあっさりとした娘娘特製の味わいを深いスープが完成します。

▲豚骨だけでなく鶏ガラも炊き込み、すっきりと食べやすいスープが特徴
▲豚骨だけでなく鶏ガラも炊き込み、すっきりと食べやすいスープが特徴

自家製チャーシューは豚骨スープで1時間じっくり茹でた後、ショウガやニンニク、ネギなどを加えた醤油でさらに煮込み味をなじませます。チャーシューの旨みを含んだ醤油だれは、名物の肉やきめしにトッピングする豚肉の味付けをはじめ、ラーメン以外のすべての料理に活用されています。

また、肉やきめしの肉に深みを出し柔らかに仕上げるために紹興酒を加えるなど、二代目の謙二さんは先代から受け継がれる娘娘伝統の味をより進化させるために、常に試行錯誤を続けてきました。

▲やきめしとの絶妙なコンビネーションが食欲をそそるのは、この肉の味付けあってこそ
▲やきめしとの絶妙なコンビネーションが食欲をそそるのは、この肉の味付けあってこそ

「まだあってよかった」と言われる店であるように

今は、仕込みの時間だけしか店に出ていない店主の謙二さんは24歳から店に立ち、50年以上娘娘を守り続けてきました。

▲店主の謙二さんはこの店の顔。1日も早い完全復帰を目指している
▲店主の謙二さんはこの店の顔。1日も早い完全復帰を目指している

「僕は2代目だけど、今来てくれているお客さんの中には3世代目の中高生なんかもいます。それだけ長い間続けてこられたことは本当にありがたいですね。今回体調を崩して、街を歩いていても僕の姿を見かけて肩を叩き、声をかけてもらうことが多かった。それだけ愛されている店なんだなと実感しました」

お腹いっぱいになって「おいしかったよ」と言われることが何よりも喜び。変わらない店の姿、料理の味にホッとしてもらえる存在であり続けたいと話します。

「親父のように死ぬまで店に立っていたい。今はまだ仕込みにしか出られないけど、元気な姿で店に戻ってこられるようがんばらないとね」

「いつもの味を守り、会いたい時に会いに来てもらえる店であり続けたい」
中華料理 娘娘 店主 藤川 謙二

中華料理 娘娘(にゃんにゃん)
北九州市小倉北区京町1-6-25
TEL:093-521-6955
営業時間:11:30〜15:30(売り切れ次第終了)
定休日:不定休(営業カレンダーはインスタへ)
席数:1Fカウンター5席、2Fテーブル15席
SNS:Instagram


取材・文/写真:岩井紀子

最近の投稿

アーカイブ