昭和初期に始まり、地域に根ざした商店街として今も賑わいを見せる黄金市場商店街。その中でも、最も古い時代から続く区画の再開発が始まります。
それに伴い、再開発エリアで営業をしていた店舗がアーケード内に新設された「黄金ふれあい市場」に移転、営業を続けています。 黄金市場商店街のメインアーケード沿いにできた黄金ふれあい市場は、旧ダイソー跡地の広い区画を利用しており、青果、鮮魚、生肉、惣菜といったさまざまな業種が1箇所に集まった、買い物に便利な場所として賑わっています。
●活魚いのうえ
午前中から客足が絶えない人気の鮮魚店、活魚いのうえ。種類豊富な鮮魚がずらりと並び、店の奥では職人たちが手際良く魚を捌く、活気ある店です。毎朝4:30から中央卸売市場で行われる競りに足を運ぶ 店主の井上良紀さんは、市場関係者からの情報をもとに、安くて鮮度のいい魚を幅広く提供することをモットーにしています。
城野ダイエーの開業時から鮮魚店として店を開き、黄金市場に移ってきたのは7年ほど前。抜群の品揃えを目当てに、開業時から通うお客もいるといいます。
「時には仕入れが高くて儲けが出ない時もあるよ。でもお客さんは安く買えたらまた来てくれるでしょ。儲けられる時に儲ければいいと思っていますね」という言葉から、商売人としての心意気を感じます。
移転前の店舗より広くなり、店内には天然のヒラメやタイなど生きのいい魚が泳ぐ大型の生簀も。午後4時ごろには、ほとんどの商品が売り切れてしまうほどの人気です。特に賑わう土日は、鉢盛りなどのオーダーにも応えています。
飲食店関係者も足繁く通う活魚いのうえ。その品揃えと品質、安さで、近隣に住むお客の期待に応える鮮魚店です。
活魚いのうえ
TEL:093-921-3898
営業時間:9:00頃〜16:00
定休日:水曜
●忽那青果店
黄金ふれあい市場前にあった店舗から移転してきた忽那青果店。16歳の時から青果の仲卸の会社に勤めてきた店主の忽那俊治さんは、「ほうれん草が当時20銭だった」という60年前から青果に携わるその道の達人です。
ふれあい市場に移転してからは「冷房が効いているから野菜の持ちもいいし、店も広くなったからお客さんも買い物がしやすくなったんじゃないかな」と話します。
一緒に働く息子さんが飲食店への配達を、忽那さんは店頭での販売を担当。飲食店からの注文に応えるためにも、品揃えが豊富なのも忽那青果店の特徴のひとつ。
「この夏はあまりにも暑すぎて、高温障害で野菜の状態が悪い上に値段も高い。お客さんにはそれをちゃんと話してわかった上で買ってもらわないと」と、お客に丁寧に野菜の状態を説明する姿から、誠実に商売をされてきたことが垣間見えます。
市場ならではの会話のキャッチボールをしながら、質のいい野菜を選ぶ楽しさが味わえる青果店です。
忽那青果店
TEL:090-4778-4195
営業時間:9:00〜17:00頃
定休日:日曜、祝日
●寿司・弁当・惣菜 ちぐさ
弁当や惣菜、寿司、おにぎりなどを扱うちぐさは、黄金市場で38年続く店。店主の竹下実さんと奥様がすべて手作りする惣菜類は毎日20〜30種。季節の食材を使ったおかずは毎朝6:30から店内で作っています。
売れ筋の「天むす」や「レタス巻き」、「日替わり弁当」はお昼時に、また「南蛮漬け」や「煮魚」、「白和え」や「野菜の煮物」などのおかずは夕食の一品にと買い求めるお客が多いそう。
黄金ふれあい市場に移転してから新しいお客さんも増え、地域の高齢者をはじめ若い層にも親しまれているちぐさ。お弁当やオードブルの注文は休日でも対応してくれるので、催しや親戚が集まる時などにも利用したいお店です。
寿司・弁当・惣菜 ちぐさ
TEL:093-921-4598
営業時間:9:00〜17:00
定休日:水、日曜、祝日
●田中食肉店
黄金市場で昭和25年から続く老舗食肉店・田中食肉店。店主の森下秀夫さんが3代目を継いでから26年。「やっぱりおいしいものを食べてもらいたいから」と黒毛和牛にこだわってきました。だからこそ常連客も多く、お目当ての商品を求めてやってくるお客の姿も多くあります。
和牛肉をミンチにしてい様子を撮影していると、人気商品の「地鶏のたたき」を買いにお客が訪れました。「あと20分で準備できるよ」という森下さんの返事を聞いて「じゃあ、あとで寄るね」とお客はほかの店へ。こうしたやり取りがあるのも市場ならではの風景です。
「『おいしかった』とまた買いに来てくれるのがやっぱりうれしいね」と言う森下さん。夫婦二人三脚で店を切り盛りする奥様の宏子さんも「これからも変わらずおいしいものを届けていきたい」と穏やかに話します。
田中食肉店
TEL:093-921-6353
営業時間:10:00〜18:00
定休日:日曜、祝日
●やさい村
やさい村として黄金市場に店を構えてから18年ほど。屋号の通り、家庭で常備している野菜がすべて揃っている上に、くだものの種類がたくさんあるのが特徴です。「飲食店からの注文にも応えているので、ほかの青果店ではあまり扱わないような野菜やくだものを置いていることも多いです」
毎朝青果市場に足を運ぶ大将・下村政博さんが仕入れの際にこだわっているのは、できるだけ安く提供できる、新鮮でおいしい野菜を選ぶことだそう。陳列された野菜やくだものを見れば、スーパーにある商品との違いは一目瞭然です。 黄金ふれあい市場に移転してからは、メインのアーケードに面しており、安くて新鮮、品揃え豊富な野菜に足を止めるお客も増えたといいます。「これからは若い世代のお客様にも、スーパでは味わえないふれあいや雰囲気、市場ならではの良さを知ってほしいですね」と話します。
やさい村
営業時間:10:00〜17:00
定休日:日曜、祝日
黄金ふれあい市場
北九州市小倉北区黄金1-3-3
HP:(こがね市場商店街)
取材・文/写真:岩井紀子