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旦過地区にできた新たなにぎわい市!青空のもと、懐かしい顔ぶれが並ぶ【旦過青空市場】

旦過地区に新たなにぎわいの場が誕生

2022年の2度の火災をうけた旦過地区の火災跡地に、北九州市によってプレハブ建ての仮設店舗が建てられ、2023年4月26日から「旦過青空市場」として動き始めました。今後、市場の再整備に伴って移転する店舗が順次オープンしていきます。

全26区画ある店舗には、5月末現在で5店舗が入居。今後も準備ができた店から随時開店していく予定です。

●味の坪田

味の坪田

60年以上旦過市場で青果店を営む味の坪田は、2度目の火災で被災直後から黄金市場で営業を続けていましたが、青空市場のオープンと同時に旦過に戻ってきました。

この店の3代目・店主の坪田美智子さんは、自らの足で探し出した農家直送のおいしい野菜を取り揃えることにこだわっています。

「いいものを出していれば、お客さんに必ずわかってもらえるはず、と思っています。夏を迎える今のおすすめは下関の『吉田のナス』。酵素栽培をしていて味が全然違います。同じく下関の『垢田のトマト』、小倉南区で採れる枝豆『塚坊のちゃちゃ豆』もおすすめです。ぜひ一度食べてもらいたいですね」

新しい店舗はスペースが限られているため、加工品を作っている黄金市場と旦過とを行き来しながらの忙しい毎日。新鮮なこだわり野菜のほか、手作りのぬか漬けやたくあん、柚子ごしょう、梅干しなどの人気の漬物類もたくさん揃えています。

知らなかったおいしい食材に出会えるのが旦過市場での買い物の醍醐味。思わず食べてみたくなるおいしそうな野菜ばかりなので、まめに足を運びたいお店です。

●シューズ ミヤ

旦過市場に唯一あった靴専門店・シューズ ミヤも、1年ぶりに旦過市場に戻ってきたお店のひとつ。

旦過に買い物にくるご婦人向けに、値ごろ感があって履きやすい靴を揃えています。「履きやすかったから同じものが欲しい」というリピート客も多かったそうで、常連客にとっても念願の再開となりました。

1度目の火災で店を失ったあとも「やっぱり旦過で店を開きたかった」という店主の宇都宮清さんは、20年近く過ごしてきた旦過市場の魅力をこう語ってくれました。

「お得意さんはもちろん、隣近所の店の人との輪があって人情に厚いまち。人の流れがあってこそ、そうした関係が育まれるのだと思います。青空市場もこれからどんどん店が開いていくと思うので、いろんな方との新しい関係を築いていけたらいいですね」

●武藤本家商店

被災後、タンガレンガ広場、旦過中央市場で仮営業をしていた武藤本家商店も、青空市場で本格的に営業を再開しました。

「お寿司屋さんや料理店などに収めることが多いので、うちもプロとして天然もの、質の高い魚を仕入れることにこだわっています」と話してくれたのは内藤清伸さん。この日も特大のボタンエビやかたちのいいアジなど、見るからにおいしそうな魚介が並んでいました。

そしてこの店の名物といえば浜名湖産うなぎ。身はふんわりと柔らかく、外はカリッと香ばしく焼けていて、ファンも多い一品です。

「うちのウナギはしっかりと素焼きをしているから臭みもないので、白焼きをわさび醤油で食べたいという方も多いです。蒲焼きのタレの乗りもぜんぜん違います。香り高く焼き上げたウナギは、今も昔も看板商品のひとつ。これからも工夫をしながら、いい商品を届けられるように頑張っていきます」

●田中商店

2度目の火災で全焼の被害を受けた精肉店・田中商店。冷蔵庫などの設備が必要なため旦過での再出店のめどが立たずにいましたが、ようやく店舗を構えることができました。

「火災後は砂津に加工場を確保し、飲食店などへの卸し売りで繋いできました。新しい店は小さな店ですが、ショーケースのサイズをコンパクトにしながら、できるだけたくさんの商品を並べられるよう工夫しています」と店主の田中辰男さん。

田中商店は日常使いの肉のほか、ラム肉や合鴨、馬刺しなど、その品揃えの豊富さも特徴のひとつ。以前の店で行列ができるほど人気だった煮込みハンバーグやローストビーフ、とり肝のしぐれ煮などの手作り惣菜も取り揃えており、昼過ぎには売り切れるものもあるほど。 「2度の火災が起きたこの場所は、たくさんの方の応援や協力をいただいてできた場所なので、明るい笑顔で元気に営業しながら、復活した姿を見せていきたいですね」

●村上甘泉堂

戦前から続く菓子店・村上甘泉堂は、旦過市場南側、中央市場の入り口から移転してきたお店。

50年以上使い続けているブリキのケースに入ったたまごボーロやゼリービーンズなどのほか、店内に並ぶのは昔懐かしい、お茶菓子ばかり。

店主の村上勝子さんは、義父母から店を引き継ぎ、50年以上店頭に立っているのだそう。

「店を継いだ頃はね、小さな子どもを抱えながら朝早くから店を開けて、大変だったのよ」と話す村上さん。たくさんの思い出が詰まった以前の店舗から離れる時には涙が出たといいます。 「建て替えでいずれ出ないといけないのはわかっていたから、新しい場所に来られてほっとした気持ちもあります。まだ落ち着かないけどね。それでもお客さんがわざわざ顔を見にきてくれて、話ができるのはやっぱりうれしいね。店が狭くなったから商品をたくさん出せないのはちょっと寂しいけど、ぼちぼち続けていきたいですね」

常連のお客が次々に訪れ、「おばちゃん、元気だった?」と話が弾む様子はやはり市場ならでは。真新しい旦過青空市場でも昭和の香りが残る老舗の味わいが楽しめるのも、魅力のひとつです。

旦過市場の一部として賑わう日を目指して

スタートを切ったばかりの旦過青空市場。各店舗、新しい場所での営業は手探り状態ではありますが、少しずつ工夫を重ね、より買い物がしやすい場所へとどんどん進化していきそうです。

旦過青空市場の入り口は3ヶ所。旦過市場沿いは「戸根食肉」と「小倉かまぼこ」の間から、小文字通り沿いは「丸和前ラーメン」横から、また、再建工事中の小倉昭和館南側からも入ることができます。

▲旦過市場側の入り口(オレンジ色のカラー舗装が目印です)
▲旦過市場側の入り口(オレンジ色のカラー舗装が目印です)

旦過市場は大正初期に市場の原型が形成され、今では「北九州の台所」として市民に愛される市場へと発展してきた歴史ある市場です。戦後の混乱や水害などの天災にも負けず、たくましく歩んできたこのまちの心意気は、2度の大火を経て、新たに立ち上がった旦過青空市場にも生きています。

火災からの復興、そして今後進められる旦過地区の再整備に向けて、旦過市場の活気や賑わいは、少しずつ形を変えながら引き継がれていきます。

旦過市場、そして旦過青空市場を訪れ、市場ならではの雰囲気を味わいながらお買い物を楽しんでもらいたいと思います。

取材・文/写真 岩井紀子

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