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小倉まちなかコラム

ほかでは味わえない国産酒との出会いをつくる“和酒のテーマパーク”【和酒処 Hirai】

京町銀天街の西端近くにある和酒処 Hiraiは、その名の通り“ジャパニーズの酒”にこだわった酒場。日本酒好きの人ならその店名からピンとくる人もいるかもしれませんが、店長の柴田 曜年(あきとし)さんは、魚町3丁目にあった日本酒BAR〈飛来kizunA銘酒ギャラリー〉(2024年4月の火災で被災し、現在は〈飛来haku〉として浅野で営業中)で料理長として修行したのち、この店をオープンさせました。

〈Hiraiの昼の顔〉品数豊富な限定20食のランチは争奪戦

月、水、木曜にランチ営業をしているHirai。メニューは週替わりの定食が4種類あり、取材に訪れた日はハンバーグ、とんかつ、アジフライ、刺身から選べ780円(刺身定食のみ880円)。小鉢や茶碗蒸し、味噌汁、サラダなどもついておりボリュームも満点。柴田さんは毎朝市場に通い、魚の新鮮さもピカイチです。

ランチ提供は1日限定20食とあって、早い日にはオープン30分で売り切れることも。バランスがよく満足感の高いランチのファンが多いのも頷けます。

〈Hiraiの夜の顔〉200種近い和酒との出会いを楽しむ場

和酒との出会いをコンセプトとするHiraiでは、日本酒をはじめ、焼酎、ワインやウィスキー、ジン、果実酒など。国内で作られた酒を厳選し、その数は200種近くもあります。

日本酒と焼酎はメニューがなく、お客の好みを聞いたり、食べている料理に合うもの、呑む順番まで考慮してソムリエのように選んでくれるスタイルです。

「あえて有名どころのお酒ではなく、小さな蔵元のものを扱っているので、初めて出会うお酒も多いと思います。今取り揃えている中では、長野県にある土屋酒造店さんの日本酒「亀の海」や、鹿児島県大海酒造さんの芋焼酎、静岡県千寿酒造さんのウィスキー「娑婆陀婆(シャバダバ)」。どれもあんまり知られてないけどレベルが高くておもしろいですね」

日本酒、焼酎は基本的に1杯550円と手頃な価格なのもうれしいところ。これは高いイメージがある日本酒の敷居を低くしたいという柴田さんの思いでもあります。品揃えは年中変わるので、訪れるたびに発見があるのもこの店の魅力のひとつです。

作り手の顔が見え“つながり”を感じられるのが和酒の魅力

▲ワイングラスで提供される選りすぐりの日本酒は格別な味わい
▲ワイングラスで提供される選りすぐりの日本酒は格別な味わい

柴田さんがHiraiをオープンさせたのは2020年の10月。ちょうどコロナ禍真っ只中で、夜の営業がままならない時期の厳しい船出でした。朝6時からおにぎりを、昼はオードブルやチーズケーキを作って販売していたといいます。「通常営業ができない中、いろいろ考えてやっていた時期は案外おもしろかったですよ。店頭でウクレレを弾きながらおにぎりを売っていたことは、今では笑い話ですね」と振り返ります。

20代前半はバーや飲食店で働いていたという柴田さん。それまで洋酒をメインで扱っていたため、日本酒のことはほとんど知らなかったといいます。バーテンダー時代にたまたま誘われた日本酒をつくるツアーで搾りたての日本酒を口にし、「それまで日本酒というとおじさんが呑んでいるカップ酒みたいなイメージしかなかったけど、米でこんなにフルーティなお酒ができるのか!」と衝撃を受け、そこから日本酒の世界にハマっていきます。

いずれ自分で日本酒の店を持つことを夢見つつ、柴田さんは5年間自衛隊に入隊。各地の駐屯地から各地に配属されても、近隣の酒蔵を巡り日本酒の奥深さに触れ、知識や関係を深めていきます。

▲酒に合うフードメニューも人気。揚げ物から海鮮メニューまで種類も豊富だ
▲酒に合うフードメニューも人気。揚げ物から海鮮メニューまで種類も豊富だ

「日本で作られているお酒を扱うのは、つくり手の顔が見える楽しさがあるから。僕が新しいお酒に出会うのも酒屋さんや酒蔵とのつながりがあってこそなんです。うちで呑んだお酒を気に入ってくれたお客さんが、酒蔵に足を運んでくれることもあって、それはなにより嬉しいことですね。蔵元さんも、直接お客さんの声が聞けることを喜んでくれますし。お酒を楽しみながらそういう“つながり”ができる場所でありたいと思っています」

柴田さん自身もこの店を開いて酒蔵とのつながりが増えたといいます。

「店をオープンした頃に旅行先でたまたま出会った大分県の大地(おおち)酒造さんとはすごく息があって、毎年酒造りの手伝いにも行っています。大地酒造の酒は米の旨みがしっかりとした辛口で、食事と一緒に呑むと、両方が引き立ってすごくおいしいんです。年に1度蔵主を店に呼んでイベントをしていて、その日は大地酒造の酒しか出さない、とにかく味わい尽くすような会なんです。ほかにもおもしろい焼酎をつくっている蔵元さんもいるんで、今後はそんな蔵元さんとのイベントもやってみたいですね」

食事はもちろん、バー感覚で立ち寄る人も多く、お客の年齢層も幅広いというHirai。柴田さんは「特にこれからは若い世代の人に、もっと日本酒、和酒の楽しさを知ってもらいたいと思っています」と話します。目指すのはディズニーランドやUSJの次の存在になるような大人のテーマパーク。日常を忘れておいしい酒に酔いしれる楽しい時間と場所でありたいといいます。

日頃あまり呑まない人にもおいしいと思ってもらうには、呑む順番や食事との相性が大切だという柴田さんは、好みだけでなく酒の進み具合も見ながらその人に合う酒を提案してくれます。通えば通うほど違う発見があり、新しい出会いがある和酒処 Hirai。楽しい一杯が待っている店です。

「和酒を通じて大人が楽しめるテーマパークのような“酒の国”を目指しています」
和酒処 Hirai 柴田曜年

【和酒処 Hirai】
北九州市小倉北区京町1-6-36
TEL:093-533-0234
営業時間:ランチ(月、水、木曜 限定20食)11:00〜13:00(売り切れ次第終了)
     /16:00〜22:00(土日祝日は13:00〜22:00、連休最終日は〜21:00)
定休日:火曜
席数:26席(最大35席)
SNS:Instagram


取材・文/写真:岩井紀子

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