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旦過市場レポート【前編】火災を乗り越えて元気に営業中!活気と賑わいあふれる北九州の台所。

2022年4月19日、そして8月10日。2度の大火に見舞われたこの日は、旦過市場の人々にとって忘れられない日となりました。

旦過市場で話を伺っていると「特に復興の最中に起きた2度目の火災の時は、前を向いていた心が折れそうになった」、「毎日顔を合わせ、一緒の商売をしてきたご近所の被害に、かける言葉が見つからなかった」という声も聞きました。

それでも前を向いて、これまで通りの旦過市場を守っていこう! という気持ちになったのは、たくさんのお客様からかけられた心配の声や励ましの声だったといいます。

旦過市場は、今日も多くの店舗が元気に営業を続けています。鮮魚、青果、精肉、惣菜、乾物、加工品などなど、さまざまな専門店が軒を連ね、多くの人が足を運ぶ旦過市場はまさに食の宝庫です。

「旦過市場レポート」では、いつもと変わらない笑顔で迎えてくれる市場の人とお店の姿を、前編/後編に分けてお届けします。

●三天堂

薬や化粧品などを取り扱い、昭和11年から続く三天堂さん。4月に被災後、お盆前には市場内の空き店舗で営業を再開しました。

三天堂
三天堂

店舗と共に自宅も失い「命以外は何も残らなかった」という失意の中、店舗再建へと動けたのは、お客様からの声があったからといいます。「健康のためにお勧めしてきたお薬を『続けたい』というお客様の声になんとか応えたいという一心でした。店は小さく、最低限のものしか置けませんが、健康を支え安心を届けているという初心に帰れました。今はなによりお客様に会えてお話しできることが嬉しいですね」

三天堂
三天堂

生活も、そして心と体の健康も、毎日の積み重ねだと改めて実感したといいます。いつかは、以前のように手作りスイーツも販売したいという目標を持って、少しずつ前に進んでいるそうです。

●市場寿し

1度目の火災で被災後、7月上旬には旦過市場内で移転再オープンをした市場寿しさん。冷蔵庫など必要最低限の器材を揃え、できるだけ早いオープンを目指して奔走されたそう。

「以前は店内でも食べていただけたけど、今はテイクアウトのみの販売になり、残念がるお客様も多いです。それでも『安くておいしい』と足を運んでくれるお客様のために、値段を上げずに頑張っています」

市場寿し
市場寿し

人気は600円の「握り寿司」「海鮮ちらし」「穴子ちらし」。ゆくゆくはまたお店で食べられる店にできればと考えているそうです。

市場寿し
市場寿し

●ぽけっと

おいしそうなお惣菜がずらりと並ぶぽけっとさん。お昼頃にはすべて売り切れてしまうほど人気のお惣菜屋さんです。「狭い店だから台に乗るだけしか作れないけど、お客様から『明日あれ作っといて』なんてリクエストにもできるだけ応えるようにしています」すべて手作りのお惣菜の材料には、市場の中の食材を使っているそうです。

ぽけっと
ぽけっと

旦過市場には特別な思い入れがあるという山崎さん。「中学生の頃から市場が好きで、よくうろうろしていたんです。大人になって、たまたま旦過でお店を開くことになって、すごくご縁があるなと思っています。店は27年だけど、私は40年以上の付き合いになります」火災の後は、来たくない、見たくないという時期もあったといいます。それでも日々のお客様との会話で元気を取り戻しているそうです。

●ぬかみそだきのふじた

昔ながらの製法で丁寧につくる「ぬかみそだき」でお馴染みのふじたさん。20年前から旦過市場に軒を連ねています。「代々受け継ぐ“たね床”に豊富ないい乳酸菌を大事に育てながら、昔ながらの味を守っています」と藤田さん。じっくり炊き上げた「いわし」や「サバ」は脂が乗っていてふっくら。辛味がピリッと効いていながら優しい味わいで、子どもから高齢者まで食べやすいと評判です。

ぬかみそだきのふじた
ぬかみそだきのふじた

1度目の火災が店の目の前だったこともあり、一時休業を余儀なくされましたが、その間「頑張って」「また買いに行くから」という声をたくさんいただいたそう。「歩き回りながらいろんなお店を覗いて買物をする、という旦過市場のよさを1人でも多くのお客さまに味わっていただきたいですね」

フレーク状の瓶詰めぬかだき「ちょびぬか」や「ぬかだきめんたい」など、小倉のお土産にもなる新しい商品の開発にも力を入れる、郷土愛の溢れるお店。ホームページからの購入も可能です。

●浜田水産

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旦過の鮮魚店の中でも、豊富な品揃えがひときわ目を惹く浜田水産さん。おいしそうな魚を見ながら今日の献立を考えたり、調理の仕方を教わったり、市場に馴染みのない若い人でも気軽に立ち寄れるお店です。

「火災後にお客様から本当にたくさん声かけてもらえました。これまでも夏は暑く、冬は寒い旦過市場に足を運んでくださるお客様をありがたいと思っていたけど、今回のことで今まで以上にありがたみを感じています」

浜田水産
浜田水産

2度目の火災では店の向かい一帯が消失。仕事の合間に世間話をしたり、物々交換をしたりしていたご近所さんと会えなくなったことを寂しく思いつつ、「でもしょぼんとしてられない! 頑張っていかないとね」と、明るく話して下さった姿が印象的でした。

●BENNY’S COFFEE

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BENNY’S COFFEEさんは2019年11月にオープンしたおしゃれカフェ。休む場所が少ない旦過市場で、コーヒーを飲みながらホッと一息つけるスポットです。

BENNY’S COFFEE
BENNY’S COFFEE

ここは現役競輪選手の別所英幸選手がオーナーを務める店としても知られています。レース開催期間中は外との関わりが制限される競輪選手は、快適な時間を過ごすためにコーヒーにハマる人も多いのだとか。別所さんはその“好き”を極め、今では焙煎まで手がけているそう。

苦味のないすっきりとした味わいのスペシャルティコーヒーを中心に、こだわりのコーヒーが味わえます。また、2階のフリースペースでは英会話教室も開催されています。

●今井商店

70年を超える歴史を持つ老舗惣菜店、今井商店さん。ショーケースに並ぶ10品程度の手作りお惣菜と揚げ物を求めて、たくさんの人が足を運びます。

今井商店
今井商店

コロナ禍で“おうち需要”が増えたこともあり、新しい客層も増え、取材中は行列ができることも。ほとんどの商品が午前中には売り切れてしまいます。なかでも注文が絶えない「コロッケ」は、サックリほくほく、素朴な味わい。1個100円という価格も魅力です。

今井商店
今井商店

「こだわっているのは両親がやっていた頃からのレシピを守って、国産野菜を使うことくらいかな」と穏やかに笑う今井さん。優しい人柄が今井商店の味だと感じました。

●KOKURA堂

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カレーパンと揚げドーナツ
KOKURA堂
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パフェとぷりん
こくら堂

2021年7月にオープンしたKOKURA堂さん。名物の「カレーパン」と夏は「かき氷」、秋からは「フルーツパフェ」などを提供しています。

夏には“映え”かき氷がSNSで話題となり、市場の中に若者が列をなすという、異例の光景が広が入りました。これまで足を運んだことのなかった若者に旦過市場の魅力に触れてもらうきっかけを作っているお店でもあります。

KOKURA堂
KOKURA堂

「カレーパンの肉も、フルーツもすべて旦過市場で仕入れています。せっかくこの場所に店を構えたのだから、しっかり市場に根ざして、新しいお客様を旦過に来ていただけるような商品で市場にも貢献していきたいですね」

●ドラゴン飯店

旦過市場で5年目を迎える中華惣菜の店、ドラゴン飯店さん。旦過市場の新鮮な食材を使った手頃な価格のお弁当やお惣菜は評判で、ロケ弁などのケータリングとしてもよく使われているそう。「生春巻き」は午前中に売り切れる人気商品です。

ドラゴン飯店
ドラゴン飯店

「僕らは旦過の安くて新鮮な食材にちょっと手を加えて提供しているだけ。『安くておいしい』が市場の魅力やからね」 「昔みたいに、お客様と声の掛け合いがある元気な市場にしたいよね」と、今日も店頭では店長やスタッフがお客様に声をかけています。

ドラゴン飯店
ドラゴン飯店

●岩田屋餅菓子店

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先代の父から引き継ぎ、60年近く続く岩田屋餅菓子店さん。通るたび、おいしそうな和菓子に引き寄せられます。

岩田餅菓子店
岩田餅菓子店

「材料は佐賀のひよく米、北海道産の雅小豆、栗や芋など季節の素材は旦過市場で仕入れています。自家製のあんこも美味しいですよ」 取材した時には、栗を使った「お饅頭」や「おはぎ」や「赤飯」なども。常に季節を感じられる商品も揃えているそうです。

「お正月のお餅は岩田屋で」という方も多く、コロナ禍で帰省がしづらかった時期は、遠方の家族に送ってあげるというお客様もたくさんいたそう。それほどおいしいお餅、食べたことがない方はぜひ!

岩田餅菓子店
岩田餅菓子店

旦過レポート/後編はこちら

取材/撮影:岩井紀子

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