小倉まちじゅうモール

小倉まちなかコラム

百貨店の枠を超え、北九州の魅力を深掘りする異色のアンテナショップ【きたきゅうコロンブス】

井筒屋本館6階の一角にあるきたきゅうコロンブスは、北九州の食品や地元作家のハンドメイド作品など多種多様なアイテムがぎゅっと詰まったセレクトショップ。井筒屋が自主運営するこの売り場の舵を取るのは、入社30年を超えるベテラン社員・谷岡 成晃さん。
単に“北九州のいいものを集めたコーナー”にとどまらず、ここには商品と一緒に「つくり手の想い」や「人との物語」が並んでいます。つくり手が実際に売り場に立ち、イベントは次々と企画され、コラボ商品も続々登場。SNSでは関連投稿が途切れることがありません。まさに、生きた売り場として、存在感を強め続けています。

地域循環型で自由度の高い売り場の主役は“人”

きたきゅうコロンブスがオープンしたのは2019年の春。谷岡さんが売り場に配属されたのは、その半年後のことでした。

「コンセプトは“北九州のいいところ探し”。買う人も、売る人も、つくる人も、みんな北九州。そんな地域循環型の場をつくろうというのが、この売り場の出発点です」

売り場は決して広くはありませんが、その密度は驚くほど濃く、バラエティに富んでいます。これまで関わってきた取引先は300社以上。県の特産工芸品にも指定される戸畑区の〈孫次凧〉から、無添加の万能スパイス〈小倉スパイス〉、高校生が作ったレトルトカレー、地元ハンドクラフト作家の作品など、常時60〜100社のアイテムが並びます。地元企業とのコラボ商品なども多く、北九州にまつわる“いいもの”に出会える場所になっています。

さらに注目すべきは、百貨店の枠を軽々と超えていくフットワークの軽さです。井筒屋新館1階や本館8階での催事展開をはじめ、クロスロードでのマルシェ、そのほかにも企業とのコラボイベント、山田緑地での出張販売など、場所にとらわれず“売り場ごと”まちへ飛び出し、ファンを広げています。

「北九州全体を売り場だと考えている」と話す谷岡さんの活動範囲は、井筒屋の中でも異色。「自主運営の売り場だから自由度が高いというよりは、気合いですね。とにかくやってやろう! という気概がないとできないです」と笑顔を見せます。

「最近では勝山公園の映画イベントや旧安川邸でのイベントなどにも出店。毎年恒例の九州電力北九州支店とのコラボイベント『きた九電コロンブス』もお馴染みとなりました。SNSや人脈を駆使して“人”を起点に売り場を動かしているので、作り手が店頭に立つとSNS投稿が一気に広がり、ファンが集まり、売上にも繋がります。“つくる人”、“売る人”、“買う人”が出会う場所は、単に商品が並べただけでは得られない“熱”が生まれます。その熱量こそきたきゅうコロンブスの強みですね」

戦略的ヒット商品で北九州の魅力をプッシュアップ

▲馴染みのある北九州弁とゆるい猫のイラストが絶妙な〈北九州弁猫Tシャツ〉は色柄も豊富
▲馴染みのある北九州弁とゆるい猫のイラストが絶妙な〈北九州弁猫Tシャツ〉は色柄も豊富

今、きたきゅうコロンブスを語る上で欠かせない商品があります。それが、2025年5月の販売開始からわずか数カ月で1,000枚を超えるヒットとなった〈北九州弁猫Tシャツ〉です。

始まりは元市役所職員の作家との偶然の出会いでした。「北九州の方言を使ったTシャツをつくりたい」というアイデアから、谷岡さんは方言Tシャツの制作に乗り出します。

「最初から狙いは明確でした。『猫好き』と『北九州』にターゲットを絞ったんです。猫が好きな人はとにかく多いし、方言と相性もいい。観光のお土産にもなる。最初の柄は〈なんしよん?〉と〈なめちょんか!〉の2柄スタートし、現在はかなりバリエーションも増えました」

谷岡さん自身が絵を描き起こし、プリントは地元のTシャツ屋さんと協力することで、「みんなが儲かる」北九州循環の仕組みを意識して行われました。谷岡さん自らも方言Tシャツを着て広告塔として活動していますが、なんといってもヒットの真因はその“広げ方”にあります。

「地域のキッズモデルや地元アイドルにTシャツをプレゼントし、SNSでの発信を依頼しました。メンバーごとに色を変えた展開にすると、ライブで着るファンが現れさらに拡散。テレビの番組で紹介してもらえたのもSNSのおかげですね」

今ではTシャツにとどまらず、ステッカーやLINEスタンプなど新しいアイテムも続々と登場。地元ぬか炊き店とコラボしたぬか炊き〈ぬかだきたべりぃー〉もキャッチーなネーミングでお土産として好評を得ています。

さまざまな人を巻き込みながら“みんなで育てる商品”へ成長する北九州弁猫シリーズはまだまだ広がっていく予感。きたきゅうコロンブスのオリジナルブランドとして今後の発展が楽しみです。

▲黒崎井筒屋の寝具売場、井筒屋北九州空港店、食品の物産展など、これまでに経験してきた仕事がすべて今の活動に活きているという谷岡さん
▲黒崎井筒屋の寝具売場、井筒屋北九州空港店、食品の物産展など、これまでに経験してきた仕事がすべて今の活動に活きているという谷岡さん

北九生まれ、北九育ち。谷岡さんの北九愛は、きたきゅうコロンブスの担当になってから大きく育まれていったといいます。

「北九州って意外とまちが大きくて、いろんなジャンルが幅広く揃っていると思いますね。深掘りすればおもしろいもの、まだ知らないものがたくさん眠っているので、まだまだ奥は深いと思います」

そんな思いから、谷岡さんは仕事の枠を超え、プライベートでも気になる人、気になる場所に足を運んでいます。そうして出会った人との繋がりが、新たな繋がりを呼び寄せているのは、谷岡さんの行動力とフランクな人柄に依るところが大きいと言えそうです。

「毎年新しい人に出逢いますし、向こうから声をかけてもらうことも多いですね。小倉城マルシェの出展者の皆さんに北九州弁猫Tシャツを着せようと提案してもらえたことは嬉しかったですね。漫画家の陸奥A子先生のサイン会・トークショーができたのも、元を辿れば下関在住の漫画家・文月今日子先生からの繋がりです。山田緑地でニホンミツバチの養蜂を行っている方との出会いで、きたきゅうコロンブスの巣箱を作り、採取した蜂蜜の販売も進めています。ご縁っておもしろいなとも思います」

さまざまな人との出会いが化学反応を起こして、きたきゅうコロンブスに繋がっていく。もはや”売り場“という枠を超え、 “プラットフォーム”として北九州の人、モノ、コトを発信しています。

人との出会いをかたちにしていく谷岡さんのパワーは、「おもしろく生きていきたい」と常に考えているからだといいます。

「アンパンマンの歌の中に『なんのために生きるのか』って歌詞があるでしょ。小学生の頃からあの歌詞をいつも心の中に持って生きているんです。僕がやっていることは百貨店としては賛否両論あるかもしれないけど、やらないと変わらないし、なにも進まない。だから『これだ!』と思ったらやろうということは決めています。やらなかったら後悔しますからね」

新しいことにチャレンジするには大変なことも多いはずですが、谷岡さんは挑戦を続けます。

「きたきゅうコロンブスならではのおもしろさで、井筒屋を身近に感じて欲しい。それが井筒屋と北九州市を盛り上げることに繋がればいいと思っています」

「繋がりを大切にして、その面白さで集客して楽しんでもらいたい」
きたきゅうコロンブス 谷岡 成晃

きたきゅうコロンブス
小倉北区船場町1-1 小倉井筒屋 本館6F
TEL:093-522-2627
営業時間:10:00〜19:00
SNS:Instagram


取材・文/写真:岩井紀子

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