魚町一丁目商店街で2軒並んで店を構える婦人服店セブン。店主の米原 修太郎さんが姉と切り盛りするこの店には、実ははっきりとした役割分担があります。角に面した北側の店が40〜50代を中心とした中年層向けなのに対し、南側の店は60〜70代を中心とした年配層向け。年代ごとに選びやすい商品構成で、長年このまちの女性たちの暮らしを支えてきました。
まちの婦人服店として愛される理由

セブンの店頭に並ぶ服は、いわゆる“普段着”が中心です。Tシャツなら1,500円ほど、パンツは3,000円台からとお手頃価格なものが多く、国内メーカーの商品もあれば、中国や韓国製の手頃な価格帯のものまで揃えています。特別な日のための一着ではなく、毎日の暮らしの中で気負わず着られること、そして「これなら買いやすい」と思える価格であることがセブンの基本姿勢です。
とはいえ、決して無難なだけの服を並べているわけではありません。歳を重ねても「できるだけ若々しく見える格好をしたい」という気持ちは、女性なら誰しも持っているもの。この時期なら、重ね着しやすい薄手でシンプルなセーターといった定番ものから、色やシルエット、素材感で“今っぽさ”を程よく取り入れたトレンド感のあるアイテムまで、店の中には選ぶ楽しみが詰まっています。着回しやすく、手持ちの服とも合わせやすい。そんな絶妙なセレクトが長く通う客の信頼につながっています。

中でも絶大な人気を誇るのが、年配者向けの丈直しのいらないストレッチパンツ。ウエストはゴム仕様で、股下は55〜60センチとバリエーションがあるため、どんな体型にも合わせやすく、買ってすぐ履けるのがポイントです。

「丈直しがいらないズボンを置いている店が本当に少なくなったと、お客様からは好評です。ご自分用に買われるお客様のほか、施設に入居するご家族のために、娘さんが選びに来られることも多いですね。自分用ではないからこそ、サイズ感や履き心地の説明を大事にしています」
そうしたニーズを丁寧にすくい上げてきたことも、セブンが支持される理由のひとつでしょう。
“必要とされる店”であるために

セブンは2013年頃に現在の場所にオープンしました。
「かつて書店や婦人服雑貨などで働いた経験は、今の接客にも生きています」と米原さん。
セブンを訪れる年齢を重ねたお客の中には「何を着たらいいかわからない」と口にする方も多いと言います。体型や好み、生活スタイルも一人ひとり違う。米原さんは、手に取る服や視線の動きから、その人が求めているものを探ります。「見るだけね」と言いながら入ってきたお客にも、さりげなく声をかけ、組み合わせを提案するなど、押しつけにならない程よい距離感を保ちながら、寄り添う接客が米原さんのスタイルです。


店内には椅子も配置されていて、買い物目的でなくても立ち寄りやすい雰囲気があるのも特徴。毎日顔を合わせる常連が、少し話をして帰ることも珍しくありません。「この前買った服、よかったよ」と言ってもらえたり、わざわざ買った服を着て見せに来てくれたりする人もいるそう。そうした日常のなにげないやりとりが、米原さんの仕事のやりがいだといいます。

商店街に店を構える米原さんの商売の原点は、店を始めるときに先輩からかけられた言葉だそう。
「商店街の店なんだから、必要とされる店になりなさい」
流行や売上だけを追うのではなく、このまちで暮らす人にとって“なくては困る存在”であること。その言葉を、今も大切にして日々過ごしています。

魚町のかつての賑わいを取り戻すために
「私が子どもの頃の魚町銀天街は、週末になると人で溢れているイメージです。その頃と比べると、今の商店街の状況を少し寂しく感じることもあります」

「お客様に『魚町に行けば何かある』と期待され、親しまれるまちをどうつくるかが、今後の課題ですね。どこの商店街も若手の担い手不足という共通の問題も抱えているので、単独の店や個々の商店街だけでなく、近隣の商店街同士が連携して情報や取り組みを共有していくことも大事だと思います」

時代によって商店街の姿は変わりゆくけれども、これからもにぎわいの中心でありたい思いと、セブンという店が必要とされる店であり続けたいという思い。このふたつの思いを胸に、米原さんは今日も店先に立っています。
「『この店があってよかった』と言われる店であり続けたい」
セブン 店主 米原 修太郎

セブン
北九州市小倉北区魚町1-1-12
TEL:093-521-1655
営業時間:10:00〜18:30
定休日:不定休(年末年始休)
取材・文/写真:岩井紀子

