小倉まちじゅうモール

小倉まちなかコラム

精米したての新鮮な米のおいしさにこだわる旦過のお弁当屋さん【小倉旦過こめ工房 米夢マイム】

北九州の食の宝庫である旦過市場で、20年にわたって米のおいしさにこだわり、夢を託す店があります。米夢マイムは旦過市場で唯一の米とごはんの専門店として2004年にオープン。毎日の食事に欠かせないおいしい米と、おにぎりやおこわなどを販売してきました。

旦過市場の再整備に伴い、この3月からは従来の店舗の向かい側に移転。お弁当やおにぎりに加え、お惣菜などのラインナップも増やして営業を始めました。

ごはんのおいしさがキラリと光るお弁当やおにぎり

お昼時の店頭には、色とりどりのお弁当やおにぎり、おかずセットなどがずらりと並びます。春には筍ごはんやピースごはん、山菜おこわ、秋になれば栗おこわやしめじごはんなど、季節を感じるごはんが登場します。そのおいしさに加え、1つ500〜600円前後という手頃な価格も魅力のひとつ。次々にお客が訪れる様子からもその人気ぶりが伺えます。

移転前までは精米機を備え、お米の量り売りもしていた米夢のお弁当の人気の秘密は、使っている米のフレッシュさ。その日に精米したばかりの新鮮な米を高温のガス釜で炊きあげています。さらにメニューに合わせて米の品種も変えるこだわりはさすがプロの仕事。

「白ごはんには米のおいしさや香りが引き立つ山口県阿武産のコシヒカリを、炊き込みごはんには小倉南区でレンゲ栽培された粘り気の少ない夢つくしを、お寿司にはヒノヒカリを使うなど、ごはんのおいしさを最大限に感じられるよう、個性を活かしたお米選びをしています」

そう語る店主の中尾憲二さんに、精米したての米と、そうでないものの違いについて伺ってみました。

「精米する前の玄米は、お米が生きている状態。土に蒔けば芽が出ますからね。精米するということは、肉や魚に例えると締める作業と同じで、そこから劣化が始まります。活きづくりのお刺身がおいしいように、精米したてのいちばん新鮮なお米を炊いているので、ベストなおいしさを味わっていただけます。

米夢のごはんを食べて、味の違いに驚かれるお客様もたくさんいます。この仕事を始めた頃、食の細かったうちの子どもたちが白ごはんを狂ったように食べ始めたことには驚きました。食べっぷりが違うんですよ。子どもでも気づくおいしさの違いをぜひ体感していただきたいですね」

米のプロに聞く、おいしいごはんの炊き方
▲おかずは中尾さんの手づくり。新メニューにも注目したい

新店舗に移ってからはお弁当のバリエーションも増やし、これまで単品でしか出していなかったおこわや炊き込みごはんのお弁当も登場。厨房が広くなったので、アジフライやコロッケなどの惣菜にも力を入れています。

中尾さんはつい最近まで、スーパーの惣菜コーナーで15年調理を担当していた腕の持ち主でもあります。玉子焼きやきんぴら、唐揚げといった手作りおかずが充実しているのも米夢のお弁当の嬉しいポイントでもあります。ふんわりと握ったおにぎりと唐揚げを組み合わせた「おにから弁当」もシンプルながらも人気の商品です。

米のプロに聞く、おいしいごはんの炊き方

精米したてというスタイルにこだわる中尾さんに、せっかくなので家庭でおいしいごはんを炊くコツを教えていただきました。 「ほとんどのご家庭では、スーパーでお米を買われるかと思います。お米選びで注意して欲しいのが精米年月日。精米日から3週間以内に食べ切るのがベストです」

※※※ごはんが“ごちそう”になるお米の洗い方※※※

  1. 計量                 正しい計量が基本。できるだけ計量器で量ってください。
  2. 研ぐ                 お米を傷つけてしまわないよう、次の手順を覚えておいてくださいね。
         「水を切る」→「1回だけお米を研ぐ」→「水交換は3回(すすぎ)」

    〜〜プロのワンポイントアドバイス〜〜
    ・1合で30回、2合で40回、3合で50回を目安に、握るように研ぐ
    ・水は必ず切った状態でお米を研ぐ
     
  3. 浸水               そのあとは1時間程度水につけてしっかり吸水させてください。
  4. 水加減           おいしく仕上がる水加減は、お米1合(150g)に対し水190g。
          スケールを使用すると正確に計量できて便利です。
  5. ほぐし          ごはんが炊き上がったら炊飯器の蓋をあけ、すばやく「シャリキリ(ほぐし)」を行いましょう。
    「蒸らさなくてもいいの?」と疑問に思う方も多いかも知れませんが、最近の炊飯器では蒸らしの時間を終えてから合図を鳴らしてくれるので、すぐにほぐしても大丈夫。

新しい店舗ではスペースの都合上、お米の販売を行っていませんが、5kg以上の場合は事前予約で精米したてのものを販売してくれるそうです。

食を担う一人として旦過市場を未来へつなぐ

3月に移転した場所は、かつて祖父が洋装店をしていた発祥の地。その後父親が継いでブティックを経営していたといいます。

「昔の旦過市場は着物屋さんや履き物屋さん、荒物屋さんなど、いろんな店がありました。僕が父から店を引き継いだ頃から、旦過市場はだんだんと食に特化した市場へと変わっていきました。せっかく旦過に店があるのだから、その利点を生かして食に関わる店をやろうと決め、2004年からお米とおにぎりの店を始めました」

その当時から今日に至るまで、旦過には米を専門に扱う店は米夢以外にはありません。精米したての米を少量から買え、同時におにぎりやお弁当も売る米夢ができたことで、旦過市場は主食からおかずの食材、フルーツや甘味まで、食卓にあがるすべての素材が集まる場所になったともいえます。

▲おこはや炊き込みごはんは人気商品のひとつ。具材の多さや彩りの良さに中尾さんの愛情を感じます

「おいしいお米を食べてもらいたくて、20年間こだわってやってきました。魚屋さんや肉屋さん、八百屋さんなど、それぞれ自分の強みを持った店が集まった魅力のある市場のひとつののパートを担っていると思っています。

市場ってそれぞれの商店の人や販売するものが魅力だと思うし、米夢もそういう店でありたいと思います。みんながそういう気持ちでいれば、市場はなくならないと思います。

おいしいお弁当屋さんがあるから旦過に行ってみよう、ついでに晩ごはんの買い物もして帰ろう、と市場に来るきっかけになってくれれば嬉しいし、それが市場の本来の姿だとおもうんです。

▲奥様のマリコさん。お客との何気ない会話も対面販売ならでは(写真は旧店舗の様子)

全国から市場が少なくなっていく中、2022年の火災を乗り越えてきたことも含めて、「今、生き残っていることに意味がある」という中尾さん。火災の時は市場がなくなることも覚悟したといいます。「信じられないような支援を受けて、激励の言葉もいただいて。皆さんから愛され、必要とされている市場だということを改めて感じた」出来事だったといいます。

「僕らはこの形を未来に繋げないといけないという使命感が大きくなりましたね。

これから長期間かけて再整備が始まりますが、僕らは旦過市場を観光地にするつもりはなくて、地元のお客さんに喜んでもらえる、人が集まる市場にしたいと考えています。日頃は近くのスーパーで買物をするかもしれないけど、特別においしいものが欲しいという時に『旦過市場に行ってみよう』と思える存在でいられたらいいと思います」

「30年後50年後にも賑わう、生活感のある市場をつくれたらいいな」と話す中尾さん。次の世代に受け継いでいくためにも、安心安全に買物ができる市場にすることが最優先。「工事が始まっても旦過市場は変わらず営業をしています。うちも含め残っている店、旦過青空市場も元気に営業しているので、これからも足を運んんでもらえるよう努力していきたいと思います」

新しい旦過市場に向けて、今後数年間は少しずつ風景も変わっていきます。それでもこれまでの旦過市場らしさはなくなることはないでしょう。活気があってワクワクしながら買物ができる旦過市場をこれからも応援していきたいと思います。

「おいしいごはんがあるからこの店に行きたいと、旦過に来るきっかけになる店でありたい」
小倉旦過こめ工房 米夢マイム 中尾憲二

小倉旦過こめ工房 米夢マイム
北九州市小倉北区魚町4-1-29
TEL:093-521-2377
営業時間:9:00〜16:00
定休日:日曜、祝日
SNS:Instagram

取材・文/写真:岩井紀子

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