この日訪れたのは黄金市場商店街の東側、黄金市場通りに面した廽転焼の店「六法焼(むほうやき) 黄金本店」。強い寒波の到来でいつもより人通りが少ない日にもかかわらず、焼きたての廽転焼を求めてひっきりなしにお客が訪れます。
父がこだわった六つの信条を守り継ぐ
昭和34年創業の六法焼は、店主の有田民子さんの両親が自らあんを炊き、饅頭店を出したのが始まり。現在は店の切り盛りを民子さんが、工場でのあん作りを弟の幸英さんが担当しています。
六法焼が64年もの間愛され続ける理由は、店名の由来にもなっている六つの信条「六法」にあります。
![六法焼](https://chushoren.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/2-1600x1200.jpg)
六法焼 六法
一法…美味 古い伝統に新しい技術を加えた高尚な風味です
二法…安価 原料は組合工場で一括製造するので安く売るのが自慢です
三法…原料 生産者と直結した良質なものです
四法…衛生 最寄りのチェーン店で焼き立ての温かいものが求められます
五法…特長 毎日食べても飽きない特別な原料が配合されてます
六法…冷え ても蒸して召し上がれば又違った風味で召し上がれます
「今も父が残してくれたレシピを受け継いでいます。高級な材料を使ってはいないけど、添加物は一切入れていません。昔ながらの材料、製法で安心して食べていただけることを大事にしています。粉の配合やあん作りをしている弟も『利益が少なくても変なものは使いたくない、ちゃんとしたものを提供したい』ってね。職人ですから」と民子さん。
安くておいしくて安心して食べられる、毎日食べても飽きない。その味は、先代の思いを受け継いでいます。
![添加物は一切入れず昔ながらの材料、製法で作るあんこ](https://chushoren.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/3-1600x960.jpg)
![添加物は一切入れず昔ながらの材料、製法で作るあんこ](https://chushoren.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/3-1600x960.jpg)
「それにうちの六法焼は卵を使ってないんですよ。最近は卵アレルギーがある小さいお子さんも多いから、お母さんにも喜ばれますね。原材料の高騰で、去年まで1個90円だったのを100円に値上げしたんだけど、お客さんには『いいよいいよ、100円でも安いし、お店がなくなる方が嫌だから、頑張って続けてね』って声をかけてもらってね。本当にありがたいし、頑張ろうって思えますね。」
![▲「値上げしても変わらず食べていただけてありがたい。お客さんが冗談で『100円になって計算が楽になったね』と優しい言葉をかけてくれるんですよ」](https://chushoren.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/4-1600x960.jpg)
![▲「値上げしても変わらず食べていただけてありがたい。お客さんが冗談で『100円になって計算が楽になったね』と優しい言葉をかけてくれるんですよ」](https://chushoren.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/4-1600x960.jpg)
薄い皮にあんがぎっしり! 焼き立てアツアツを頬張りたい
六法焼は自家製の黒あんと白あんの定番に加え、異色のカレー饅頭の3種類があります。取材中にいただいた黒あんはずっしりとボリューミー。パリッと焼き上がった皮が香ばしく、中には粒感を残したあんこがたっぷりと入っていました。甘すぎず、あずき本来のおいしさが引き立ちます。 「年配の方は『このあんこがいいのよね』と言ってくれますし、若い方にはカレーも人気です。カレーはもともと夏だけのつもりだったんですけど、冬も出してほしいという声が多くて、通年で出すようになりました。カレーの具材は合い挽きミンチと玉ねぎ、人参とシンプルですけど、弟が色々と試行錯誤して完成させた自慢の味。おいしいですよ」
![▲「時々『クリームはないですか?』と聞かれて『あんこ屋だからあんこしか炊かないんです』と答えるんですけど、カレーを出してるからちょっと心苦しい…」と笑う民子さん](https://chushoren.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/5-1600x960.jpg)
![▲「時々『クリームはないですか?』と聞かれて『あんこ屋だからあんこしか炊かないんです』と答えるんですけど、カレーを出してるからちょっと心苦しい…」と笑う民子さん](https://chushoren.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/5-1600x960.jpg)
![▲小腹が空いた時にもぴったりなカレー饅頭はやさしい味わい](https://chushoren.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/6-1600x1120.jpg)
![▲小腹が空いた時にもぴったりなカレー饅頭はやさしい味わい](https://chushoren.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/6-1600x1120.jpg)
民子さんのおすすめは「やっぱり焼き立てが1番」とのことですが、店の“六法”にある通り、冷めてももちろんおいしい。
「年末に30個くらいまとめ買いされたお客さんは、好きな時にいつでも食べられるようにひとつづつラップして冷凍するんですって。電子レンジでチンしてオーブントースターで焼くとおいしいよって教えてくれました」
毎日通う常連は、年配の方から小学生まで幅広い
![お店外観](https://chushoren.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/7-1600x1120.jpg)
![お店外観](https://chushoren.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/7-1600x1120.jpg)
常連客が多い六法焼。それはまさに「毎日食べても食べ飽きない」からこそ。
「毎日買いに来てくれるお客さんもひとりやふたりじゃないですよ。塾の帰りに毎日一個買って帰る小学生もいます。会社や部活の差し入れにする人も多いですね。買いやすいしおいしいから、みんなに喜んでもらえる。そんなふうに使ってくれるのは嬉しいですね」
そんな民子さんは店に立つのが本当に楽しいと話します。
「『昨日は黒を食べたから、今日は白ね』とか、『今日は病院帰りでね』なんておしゃべりができるのもこの商売の楽しいところですね。お客さんと色々話せて、若い従業員も助けてくれて、私にとって店は本当に居心地のいい場所。この歳まで楽しく働ける職場ってありがたいですよね。みんなに感謝して、日々頑張っています」
![心を込めて六法焼を焼く背中](https://chushoren.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/8-1600x1120.jpg)
![心を込めて六法焼を焼く背中](https://chushoren.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/8-1600x1120.jpg)
週に3〜4日、午前中はスポーツクラブに行き、友人とランチをしてお昼から店に出るという民子さん。明るくてイキイキとしている姿が印象的です。大のホークスファンで、年間10回以上行くという野球観戦が楽しみなのだそう。夕方に迎えに来てくれるというご主人も、そんな民子さんを応援してくれているそうです。
「黄金市場商店街は、昔みたいな賑わいはないけれど、人情味があるまちです。顔が見えるっていいですよね。商売する側からしてもすごく楽しいし嬉しいことです。新しいお店も少しづつできているし、お饅頭を待っている間にちょっと足を伸ばしてみてほしいですね」
![毎日心を込めて焼かれる六法焼](https://chushoren.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/9-1600x960.jpg)
![毎日心を込めて焼かれる六法焼](https://chushoren.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/9-1600x960.jpg)
「店は元気になれる場所。みんなに感謝して頑張っていきたいです」
六法焼 黄金本店 有田 民子
取材/撮影:岩井紀子
六法焼 黄金本店
北九州市小倉北区黄金1-4-2
TEL:093-922-7442
営業時間:9:30〜17:00
定休日:日曜、祝日