小倉まちじゅうモール

小倉まちなかコラム

鶏肉から惣菜、24時間冷凍自販機と、進化を続ける黄金町の人気店【とり肉のワールド】

地域の生活に密着した商店街として賑わいを見せる黄金市場商店街。そのなかでも精肉・惣菜の販売で街の中心的存在として人気を誇るのが「とり肉のワールド」の系列店舗です。

1976(昭和51)年に黄金市場商店街で鶏肉と唐揚げなどの惣菜の販売を始めた「とり肉のワールド」は、その後、現在の場所に移転し、牛肉・豚肉など精肉全般を取り扱う「ミートワールド」と惣菜専門店「デリカワールド」として営業。地域住民の食卓を彩ってきました。また、2024年1月には、こだわりの食材を使用した冷凍惣菜を販売する自販機を設置した「おうちワールド」も新設され、24時間365日、ワールド自慢のおいしいグルメを味わえるようになりました。

商店街の一員として地域に根を張る

ミートワールドの前身である「とり肉のワールド」のはじまりは現在の会長の父が福岡市博多区の萬行寺そばに開いた店が始まりです。その後会長が北九州に移り、戸畑や門司で数店舗を展開。1976年に、当時、旦過や魚町と並ぶ賑わいを誇っていた黄金市場商店街に移転してきました。その当時は鶏肉の専門店として、生肉と唐揚げなどの惣菜を販売していたといいます。その後、商店街の中心に店を構え、食肉全般を扱うようになりました。

現在店を切り盛りするのは、会長の娘婿である中江 克さん。長崎出身でもともとは東京の鉄鋼メーカーで働いていました。奥様の実家であるとり肉のワールドの後継者問題で、店を閉める話が持ち上がったときに「やめるにはもったいない」と会社を辞め、ワールドを引き継ぐことを決めたといいます。

「小倉に来たのは32歳の時。当時は商売のことは何も知らなかったので、売るものはあるし、なんでもできる、なんとかなるだろうと思っていましたよ。今思うと、僕らみたいな小さな規模の会社の経営はなんでもひとりでやらないといけなくて目が回ります。でもその分、いろんな方と会えるのはメリットですね。素敵な経営者の方にお会いして刺激を受けたり。商店街に属しているからこそ、商店街を背負って普通だったら会えない方に会えるのはありがたいです」

かつて商店街で商いをする人たちのほとんどが店舗の上に住居を構えており、まさに商店街が地域のコミュニテイそのものでした。今ではそれも珍しくなりましたが、中江さんのお住まいは店舗の上。店頭に立つ傍ら、地域の役員をしたりPTA会長を引き受けたりと、公私共にこのまちと一緒に生きています。取材の合間にも、通りかかる人から次々に声がかかり、世間話に花を咲かせる姿に、本来の商店街の姿を垣間見ることができました。

生きている手応えを感じる食品販売

サラリーマンから一転、畑違いの仕事を始め、苦労も多かったけれど、家族なかよく楽しく過ごせているという中江さん。さらに「食べ物を扱う仕事は楽しい」と笑顔を見せます。

「鉄鋼メーカーに勤めていた時は大手企業を相手に毎月何千トン、何万トンという単位のものを扱っていたんですけど、こっちにきたら近所のおじちゃんおばちゃん相手に100グラム、200グラムのものを売るわけですよ。もう真逆なんですよね。

当時僕はステンレスを売っていたんですけど、ステンレスはいつまでも朽ちないでしょ。それに比べたらでも食べ物は食べたら翌日にはなくなる。そしたらまた買いに来てくれる。それってすごく自然なこと。だからやっぱり食べ物の方がいいなって思ったんですよ」

人の体をつくる食べ物を扱う商売には「将来性も感じる」と中江さん。おいしい惣菜をよりいい素材を使って作ったら、お客さんが喜んで買ってくれる。努力すれば努力した分返ってくるこの仕事は、生きている手応えがあるといいます。

「ありきたりですけど、『おいしかった』と言われるのがやっぱり喜びとしては1番です。おいしければリピートしてくれるから、我々みたいな小さな企業でも生きる道があるんだなと感じます」

手間ひまをかけて朝びきの丸鶏をさばく

ミートワールドで扱う鶏肉は基本的に九州産、牛肉は和牛をメインに揃えています。なかでも特筆すべきは鶏肉です。福岡を代表するブランド鶏「はかた一番どり」の朝びきを丸鶏の状態で仕入れています。

「普通の肉屋さんは大体、部位ごとに真空パックされた状態のものを仕入れるのが一般的。そのほとんどが数日前にさばいた鶏なんです。

牛肉や豚肉と違って、鶏肉は鮮度が命。北九州で手に入る“今朝まで生きていた鶏”というと、『はかた一番どり』しかないんです。うちは特別なルートで毎朝『はかた一番どり』を丸鶏のまま仕入れて店でさばいています。あとは週に1回、朝びきの『久留米さざなみどり』という地鶏が入ってきます」

精肉店でも丸鶏をさばける人が少ないといいます。熟練した職人がいることも、ワールドの強みになっているようです。

バラエティ豊かな和・洋・中の惣菜

「デリカワールド」は、ミートワールドの開店時から人気の唐揚げをはじめ、ハンバーグや餃子といったおかず食材、世代を超えて喜ばれている鶏皮、ワインにも合いそうなセンスのいい惣菜などを取り揃え、若い世代から高齢者まで、立ち寄る人が絶えない人気ぶりです。

ジャガイモとセロリのサラダ、ホタテと野菜のオムレツなど、百貨店の惣菜コーナーにも負けない華やかな品揃えは、店長と中江さんの奥様が中心となって考えたメニューで、すべて手作り。

「主菜だけでなく、バランスよく野菜も食べていただけるよう、サラダも充実させています」と語るのは奥様の久美子さん。小さめの容器に入っているので、一人暮らしの高齢者にも好評なのだそう。また、レバーパテやスモークサーモンのマリネなど、ワイン好きからの需要も増えているのだとか。

さらに週末はオードブル(要事前予約)の注文も多く、誕生日や記念日など、特別な日の食卓も彩っています。

プレミアム感ある惣菜を集めた冷凍自販機を新設

店休日や深夜でも、デリカワールドのおいしい惣菜が買えるようにと、2024年1月には黄金市場商店街の東側に、24時間稼働の冷凍自販機を設置したコーナー「おうちワールド」が新設されました。

焼くだけでOKの黒豚の味噌漬や冷凍餃子、はかた一番どりを使った水炊きセット、和牛煮込みハンバーグ、和牛ローストビーフといったデリカワールドの人気メニューのほか、フォアグラ入りのテリーヌや久留米さざなみどりのたたきなど、贅沢な食材を使ったメニューが揃っています。

どの商品も1時間で急速冷凍させているので、自宅で出来立てそのままのおいしさをアツアツで食べることができます。

「仕事帰りでも手軽においしいお惣菜食べていただけるので、稼働初日から売れ行きも上々です。すべてデリカワールドで手作りしたものなので、作り手の顔も見える、安心して食べていただけるものばかり。今後も飽きがこないようメニューを工夫しながら新商品も出していきたいですね」と中江さん。

新しいことにも挑戦しながら、黄金市場商店街を盛り上げている中江さん。「地域の人と交流を深めながら、この商店街のキーステーションとなる店でありたい」と夢を語ります。

顔や名前、家族構成まで知るお客との距離感の近さ、そしてなにより「売れるって楽しい」と笑顔で話す様子に、商店街での買い物の楽しさの原点を見たような気がしました。

「『食べさせたい』。その思いが原動力」
とり肉のワールド 中江 克

とり肉のワールド
北九州市小倉北区黄金1-1-23
TEL:093-921-2229
営業時間:9:00〜18:00
定休日: 日曜(祝日不定休)

デリカワールド
北九州市小倉北区黄金1-1-24
TEL:093-951-1352
営業時間:9:00〜18:00
定休日: 日曜(祝日不定休)
Instagram

おうちワールド
北九州市小倉北区黄金1-1-18
営業時間:24時間営業
定休日:なし

取材・文/写真:岩井紀子

最近の投稿

アーカイブ